ヤマハは10月3日、ピアノの発音機構を物理シミュレーションによりリアルタイムで演算し、音響信号を生成する新たなシステムを開発したことを発表した。

  • 新システム搭載電子ピアノ試作機

    ヤマハが開発した新システムを搭載する電子ピアノ試作機(出所:ヤマハ)

アコースティックピアノ特有の“響き”を再現

アコースティックピアノは、指先で鍵盤を押した力でハンマーを動かし、跳ね上がった先で弦を叩くことで音を出す仕組みを持つ。この打弦による振動が響板を伝うことで豊かな広がりを生むとともに、叩いたもの以外の弦の共鳴、さらにはさまざまな部品が構成する楽器全体が共鳴体となることで、複雑な響きが生まれるという。

対して、軽量かつコンパクトで調律が不要であるため家庭用として親しまれる電子ピアノは、弦を持たない代わりに音を出すためのスイッチを内蔵しており、鍵盤の動きを感知した際に電子音源を発音させた後、スピーカーを使って増幅させることで、アコースティックピアノに近い音色を再現している。そんな電子ピアノではこれまで、その音源としては、アコースティックピアノの音を録音しで使用する“サンプリング方式”が主流であったとする。

しかし今般ヤマハは、電子ピアノの新たな発音メカニズムを開発。ピアノの構成部品や空気の力学的な現象を数値的に解析する、3次元の有限要素法および境界要素法を用いることで、ピアノと空気の挙動をリアルに再現し、それに応じた音響信号をリアルタイムで生成するという。

  • 境界要素法を用いた解析

    境界要素法を用いた解析のイメージ(出所:ヤマハ)

同社によれば、今回の新システムには、ピアノの発音機構をデジタル領域で再現する物理シミュレーション技術を用いているといい、同システムを搭載した電子ピアノは、ハンマーや弦、響板、支柱などのピアノの構成部品と空気の相互作用を考慮した精緻なシミュレーションをリアルタイムに実施することで、鍵盤およびペダルの操作に応じた多彩な音楽表現を可能にするとした。

なおヤマハは、先進的かつ独創的な音響技術の周知と楽器文化の継承を目的として、新システムを搭載した電子ピアノ試作機を静岡県浜松市に寄贈したとのこと。この試作機は浜松市楽器博物館にて管理され、一般公開される予定だという。同社は今後も音楽体験のさらなる深化を目指し、革新的な楽器の開発に取り組むとしている。