小型人工衛星の開発・運用などの事業を展開するアクセルスペースと、不動産AIツール「WHERE」を開発・提供するWHEREは9月17日、人工衛星で取得した地球観測画像の活用による、不動産登記情報の高精度化および不動産管理業務の効率化に向けたPoC(概念実証)を開始したことを明らかにした。

  • アクセルスペースとWHEREがPoC開始を発表

    アクセルスペースとWHEREが共同でのPoC開始を発表(出所:アクセルスペース)

“見えない不動産”の見える化へ実証が始動

不動産業界では、登記情報と現況が一致しないケースが頻繁に生じており、仕入れ判断の遅れや価格評価ミスの原因になっている。特に広域を対象とする不動産業者や自治体にとって、現地での目視調査や紙の資料での確認は人的・時間的に大きな負担となることから、効率化を実現する策が求められているという。

そうした中、“宇宙から地球の不動産市場を変える”というビジョンの下で立ち上がったのが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)発スタートアップ企業のWHEREだ。同社は衛星データとAIの活用により、市場に出ていない“オフマーケット不動産”を発見・分析・管理するAIツールとして開発された「WHERE」を用いて、現在では行政・民間を問わず、土地の仕入れや空き家の活用、インフラ管理などさまざまな業種との連携を進めているといい、不動産の情報格差や調査負荷の解消を支援する手段として注目を集めている。

一方、小型衛星の設計・開発から運用までを行うなど衛星サービス事業を展開するアクセルスペースは、地球観測データ提供事業「AxelGlobe」のサービス提供にあたり、地球観測を目的とした質量100kg級の光学衛星「GRUS」の運用を行っている。このGRUSでは現在5機の衛星が軌道上で運用されており、2026年中には次世代地球観測衛星「GRUS-3」7機の打ち上げを予定するなど、今後も撮影体制の増強が計画されているとのこと。これにより、広範囲かつ高頻度での衛星画像取得を可能にするとしている。

そんな両社は今般、アクセルスペースのGRUSから取得した広範囲かつ高頻度な衛星画像と、オフマーケット探索AIのWHEREを連携させ、都市開発の状況や土地利用の変化を立体的に把握し、誰もが最新かつ正確な空間情報にアクセスできる不動産ソリューションの構築に向けた取り組みとして、共同でのPoCに着手する。このPoCは、東京・神奈川・埼玉・千葉・大阪・福岡の6都府県を対象に行われるといい、1か月間に複数回撮影した衛星画像をもとにして、土地や建物の変化をAIで検知し登記情報と照合。そして検知した際データを事業者や自治体に提供することで、実務による技術検証とニーズ調査を行うとする。

  • アクセルスペースの衛星画像による同一地点の差異検出例

    アクセルスペースの衛星画像による同一地点の差異検出例。左2枚の衛星画像の差異について、目視で検出したデータ(左から3枚目)とAIにより自動検出したデータ(同4枚目)(出所:アクセルスペース)

また両社は今後、今回のPoCで得られる知見や成果をもとに、都市部だけでなく空き家や休耕地が散在する地方都市や、災害リスクの高いエリアにも対象を拡大するなど、商用化に向けた動きを強めるとのこと。そして共同での取り組みを通じて、不動産業界だけでなく、都市計画や防災、インフラ管理、金融など幅広い分野において意思決定の迅速化と精度向上を支援するとともに、資産の適正評価、都市の健全な発展、災害時の被害最小化など、持続可能な社会基盤づくりに貢献するとしている。