東京大学(東大)と法政大学(法大)の両者は9月12日、人工光型植物工場で「養液膜栽培方式」により露地栽培を上回る収量を安定して得られることを明らかにしたと共同で発表した。

  • エダマメを一年中収穫できるLED植物工場の想像図

    エダマメを一年中収穫できるLED植物工場の想像図(出所:東大Webサイト)

  • LED植物工場の養液栽培で育ったエダマメ

    LED植物工場の養液栽培で育ったエダマメ(出所:東大Webサイト)

同成果は、東大大学院 農学生命科学研究科の高野智京大学院生(研究当時)、同・若林侑助教、同・河鰭実之教授、同・矢守航准教授、法大 生命科学部の和田宗士大学院生(研究当時)、同・佐野俊夫教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

エダマメの年中生産が可能に - 宇牛農業実現にも期待

人工光型植物工場は、LEDや空調設備によって光量、気温、湿度、二酸化炭素量、養液などを制御し、一年中安定した環境での作物生産を可能にする次世代の農業モデルだ。屋内での栽培であることから天候に左右されないため、気候変動や農薬依存などの課題を解決する手段として期待されている。

しかし、これまでの植物工場では主にレタスなどの葉物野菜が中心で、成長に時間がかかる豆類や果菜類は栽培が困難とされてきた。そうした中、東大の矢守准教授らの研究チームは先日、人工光型植物工場でのトマトの安定栽培に成功したと発表。そして、その次なる目標として研究チームは“エダマメ”に照準を定めた。

エダマメは、高タンパク・高栄養の作物として世界的に人気が高いものの、収穫後すぐに鮮度が落ちるため、夏の短い期間にしか市場に出回らないという大きな課題がある。そこで今回の研究では、人工光型植物工場でエダマメの安定かつ高品質な栽培に挑戦したという。

  • 今回の研究で用いられた栽培システム

    今回の研究で用いられた栽培システム。(A)各栽培システムの模式図。(B)成熟時の植物体と莢。品種は「莢音(さやね)」(出所:東大Webサイト)

今回の研究では、養液膜栽培(NFT)、ロックウール栽培(ROC)、噴霧栽培(MIST)という、3種類の栽培システムの比較が行われた。その結果、養液膜栽培で最も茎や葉の成長が旺盛で、露地栽培(FIELD)よりも多くのバイオマスを生産し、植物工場でも力強く育つことが示されたとした。

またその中で研究チームは、収量を左右するのは、花の数よりもどれだけ効率よく莢(さや)をつけられるかであることを確認。養液膜栽培は莢の数と種子の数が多いことから、露地栽培を上回る収量を実現し、畑より多くのエダマメが植物工場で収穫できることが示された。

  • 収量および収量構成要素のグラフと収量関連形質間の関係図

    (A)収量および収量構成要素のグラフ。(B)収量関連形質間の関係図。図中の各値は相関係数を示す。実線は有意な相関関係があることを、破線は有意な相関関係がないことを示す。線の太さは相関の強さを表し、赤線は正の相関、青線は負の相関があることを示す(出所:東大Webサイト)

農作物は、生産効率だけでなく味の問題も極めて重要だ。エダマメの味は、糖とアミノ酸のバランスで決まる。今回の分析の結果、養液膜栽培やロックウール栽培ではショ糖が多く、甘みが強いことが明らかにされた。併せて遊離アミノ酸はやや低めだったものの、健康成分として注目されるイソフラボンは、養液膜栽培で露地栽培よりも多く蓄積していることも確認。LED光環境がイソフラボン合成を促進する可能性も示唆され、従来の畑では得られない品質向上が見られたとする。

  • エダマメの成分に関するグラフ

    エダマメの成分に関するグラフ。(A)可溶性糖および澱粉含量。(B)遊離アミノ酸含量。(C)イソフラボン含量(出所:東大Webサイト)

最後に、収量、甘味、機能性成分といった複数の指標を統合しての比較が行われた。その結果、養液膜栽培が最も高い評価を得たとのこと。さらに、養液膜栽培は多段式の積層栽培にも適しており、都市部の限られたスペースでも効率的に大量生産できる可能性が示されたとした。

  • 収量関連形質および子実成分の主成分分析の結果

    収量関連形質および子実成分の主成分分析(PCA)の結果。(A)PCA二次元プロット。(B)各形質の因子負荷量。第1主成分(PC1)と第2主成分(PC2)の寄与率は、それぞれ全分散の71.1%、21.8%を占めた。矢印は各形質がPC1およびPC2に及ぼす影響の強さが示されている(出所:東大Webサイト)

  • 養液膜栽培と圃場栽培を比較した子実の代謝マップ

    養液膜栽培と圃場栽培を比較した子実の代謝マップ。赤色の星は養液膜栽培で相対的に多い成分、青色の星は少ない成分を示す(出所:東大Webサイト)

今回の研究により、人工光型植物工場において高品質なエダマメの安定的な栽培が実現された。この成果は、これまで夏期限定だったエダマメを一年中楽しむことを可能にするうえ、都市の高層ビル内や砂漠地帯といった耕作が難しい環境、さらには宇宙空間においても、高タンパクで栄養価の高いエダマメを生産できる可能性を広げることができたという。研究チームは、都市農業の新しいビジネスモデルとしての利用に加え、長期宇宙ミッションでの食料供給源としても大きな期待が寄せられるとしている。

  • 人工光型植物工場におけるエダマメの最適な栽培システム

    人工光型植物工場におけるエダマメの最適な栽培システム。(A)各栽培システム間の特性比較。各値は標準化したZスコアを示す。(B)植物工場に養液膜栽培を導入した際の想像図(出所:東大Webサイト)