300℃で使用可能なパラジウム合金水素透過膜を開発

田中貴金属工業は9月12日、300℃前後の低温領域で使用可能なパラジウム(Pd)合金水素透過膜の開発に成功したことを発表した。

  • パラジウム合金水素透過膜

    開発されたパラジウム合金水素透過膜(PdCu39) (出所:田中貴金属)

PdCu系合金膜において、パラジウム含有率が60%、銅含有率が40%の合金であるPdCu40がもっとも水素透過性能が高いと言われているが、PdCu40で水素を精製するためには、400℃前後の高温での運用が必要とされていた。

しかし、近年の高純度な水素を精製するためには、メタノール水から生成された水素ガスを水素透過膜が組み込まれたモジュールで精製する方法が一般的となっているが、メタノール水から水素を生成する際の温度は300℃前後ながら、水素透過膜は400℃以上で性能を発揮するため、追加の加熱設備が必要となりコスト増加の一因となっていたほか、加熱による不純ガスの発生も課題となっていたという。

独自の熱処理方法で完全なbcc相を実現

今回、田中貴金属では、PdCu系水素透過膜のパラジウム含有率に着目することで、パラジウム含有率が61%、銅含有率が39%の合金であるPdCu39にてPdCu系水素透過膜の最大性能を引き出すことに成功したとする。

従来、少しでも面心立方格子構造(face centered cubic)を持つ金属の相(fcc相)が混在していると水素透過性能が低下してしまうこと、ならびに相を完全に体心立方格子構造(body centered cubic)を持つ金属の相(bcc相)とすることが難しいとされており、PdCu39は高い水素透過能力があると考えられていなかったという。

それに対し、同社では長年の貴金属素材研究開発で培った知見から確立した独自の熱処理方法を用いることで、完全なbcc相を得ることを可能としたとのことで、これにより約300℃という低温で水素を精製できるようになるため、追加の加熱設備が必要なく、従来よりも設備の酸化が抑制できるようになるとしている。

なお、同製品の詳細については2025年9月17日~19日に北海道大学で開催される、日本金属学会の「2025年秋期(第177回)講演大会」にて学会発表される予定だという。