大成建設、東京大学 地震研究所(東大 地震研)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の3者は8月19日、スーパーコンピュータ(スパコン)「富岳」を活用し、今後発生が予想される南海トラフ地震などの海溝型巨大地震で想定されるさまざまな地震発生ケースを網羅的に解析できる「3次元長周期地震動シミュレーション基盤」を共同開発したと発表した。
今回の技術は、大成建設、東大 地震研、JAMSTECが参加する文部科学省「『富岳』成果創出加速プログラム」の一環として開発された。
スパコン富岳の活用で耐震安全性能の検証を強化
近年、南海トラフ地震が警戒されている。この地震は、2011年の東北地方太平洋沖地震と同様の海溝型巨大地震だ。こうした大規模地震では、周期が長くゆっくりとした大きな揺れを伴う長周期地震動が観測される。超高層ビルなどの固有周期が長い建物は、長周期地震動の揺れに共振しやすく、長時間にわたり大きく揺れ続けることがある。また、長周期地震動は遠くまで伝わりやすい性質を持つことから、超高層ビルなどを建設する際には、耐震安全性能を確保するため、構造設計の段階で建設地における長周期地震動の影響を正確に予測することが求められる。
しかしこれまでの長周期地震動シミュレーションでは、複雑な地盤構造をモデル化するのに長い時間を要していた。また、巨大地震の発生ケース自体も一様ではなく、想定震源域が全域にわたりずれ動く「全割れ」や、一部がずれ動いた後に時間差で残りがずれ動く「半割れ」など、さまざまなケースが想定される。このため、計算負荷が非常に大きく、一般的なコンピュータでは多様な地震発生ケースについて正確に解析することは極めて困難だった。そこで大成建設はスパコン「富岳」の活用を前提に、地盤モデルを生成し、想定される多様な地震発生ケースごとに震源モデルを自動生成できるプログラムを独自に開発したという。
今回開発された3次元長周期地震動シミュレーション基盤により、想定される多様な地震発生ケースについて、極めて短時間で網羅的な検討が可能となったとする。さらに、東大 地震研が開発し、JAMSTECが改良を加えた三次元有限要素法の計算コード「E-wave FEM」を用いて、巨大地震を対象とした地震動計算を実施。これにより、長周期地震動を高精度かつ短時間で把握できるようになった。この3次元長周期地震動シミュレーション基盤の特徴と効果は以下の3点の通りだ。
1つ目は、想定される地震発生ケースを網羅する震源モデルを自動生成する機能だ。大成建設が開発した震源モデル作成プログラムは、過去のさまざまな地震の特徴量に基づき、数百から数千の震源モデルを数秒で自動生成する。これにより、従来は手作業で行っていたモデル作成の時間を大幅に短縮し、広範囲にわたるさまざまな地震動の発生ケースを網羅的に解析となった。
2つ目は、「富岳」を用いて短時間で長周期地震動を解析できる点だ。世界最高レベルの計算能力を有する「富岳」と、三次元有限要素法計算コード「E-wave FEM」を用いることで、複雑な長周期地震動を短時間で3次元解析し、その影響を正確に予測することが可能となった。
3つ目は、建物のより詳細な耐震安全性能の検証し、損傷リスクを評価できる点だ。想定しうるさまざまな地震発生ケースでのシミュレーションから得られた地震動データを統計的に処理することで、平均的な揺れや最大級の揺れの大きさを把握できる。これにより、「平均的な揺れでは建物は損傷せず、最大級の揺れでも倒壊しない」など、建物のより詳細な耐震安全性能を検証し、損傷リスクを評価することが可能となった。
今回の技術を大成建設が設計する超高層建物の構造設計段階で試験的に適用した結果、震源モデル生成の過程および長周期地震動計算手法が、国土交通省の審査を通過したことから、今後の産業利用に役立てられる基盤技術であることも実証された。
大成建設は今後、「富岳」などの国内の共用計算環境基盤を活用しながら、長周期地震動に対する建物の耐震安全性能をより詳細に検証するとした。そして、3次元長周期地震動シミュレーション基盤の社会実装を推進することで、地震に強い安全・安心な建物の普及に貢献していくとしている。
