アクセルスペースホールディングス(アクセルスペースHD)は8月13日、東京証券取引所(東証)グロース市場に新規上場したことを発表。同日には上場を記念したセレモニーを行うとともに、記者会見を実施。同社代表取締役CEOの中村友哉氏が、自社の強みや投資計画を説明するとともに今後の人工衛星事業の展望を語った。

  • アクセルスペースHD上場記念セレモニー

    アクセルスペースHD上場記念セレモニーの様子

宇宙ベンチャーとして5社目の上場に

アクセルスペースHDは、東京大学大学院の在学中に「CubeSat(キューブサット)」など3機の超小型衛星の開発を行った中村CEOが、卒業後の2008年に設立した宇宙ベンチャー「アクセルスペース」の純粋持株会社。アクセルスペースグループは「Space within Your Reach ~宇宙を普通の場所に~」をビジョンとして掲げ、誰もが宇宙を利用できる社会の実現を目指して事業を展開している。

同社のメイン事業は、顧客の宇宙ミッション実現に向け衛星開発・運用を行う「AxelLiner(アクセルライナー)」と、自社の光学衛星コンステレーションを活用して収集した地球観測データを提供する「AxelGlobe(アクセルグローブ)」の2つ。前者では顧客の自社衛星所有やミッション機器の搭載を通じた軌道上での実証や衛星サービスを実現する一方、後者ではアクセルスペースの衛星を“目”として幅広い用途に向けたビジネスインサイトを届けるとする。

なおアクセルスペースとしては、2013年11月にウェザーニューズの超小型衛星「WNISAT-1」を打ち上げて以来、累計11台の衛星打ち上げを実施しており、現在はAxelGlobe事業のデータ撮影能力を担う光学衛星を5機運用中だという。また直近では6月24日(日本時間)に自社開発の小型衛星「GRUS-3α」を打ち上げ、軌道投入後の健全性を確認したことを発表。同衛星のバスシステムやミッション機器の性能検証・評価を経て、2026年に7機の打ち上げが予定される中分解能の次世代地球観測衛星「GRUS-3」の開発が行われている最中だ。

初値は公開価格の約2倍 - 「高い評価をいただけた」

そんなアクセルスペースは7月10日、事業規模のさらなる拡大に向けた東証グロース市場への新規上場が承認されたことを発表。そして、日経平均株価・東証株価指数(TOPIX)がいずれも史上最高値を更新した8月13日、国内宇宙ベンチャーとしては5社目となる上場を正式に果たした。公開価格は375円だった中、アクセルスペースHDの初値は約2倍の751円に。これについて中村CEOは「多くの投資家から高い評価をいただけたと捉えており、私としては大変嬉しく思っている」とコメント。ただ「今日の株価に一喜一憂することなく、これからのアクセルスペースの成長性をしっかりと示しながら、今以上に期待されるような事業運営を行っていきたい」と気を引き締めた。

  • 上場通知書を手にした中村友哉CEO

    上場通知書を手にした中村友哉CEO

なお今回の上場に際して調達された資金は、主に現在開発中のGRUS-3への投資、および将来的なAxelLiner事業の強化に向けて注力予定の高分解能衛星の開発に用いるとのこと。さらに事業の資材・資金確保に加え、経営基盤強化のための人材確保にも充てる予定だとする。また会見に登壇したアクセルスペースHD 取締役CFOの折原大吾氏によれば、現時点では赤字での経営となっているものの、同社の事業自体は順調な成長を続けており、黒字化に向けて利益を拡大できる見込みとのこと。そして今般の上場により、事業成長に必要な資金は概ね確保できたとしている。

  • 折原大吾取締役CFO

    取締役CFOの折原大吾氏

GRUS-3打ち上げと民間案件拡大で事業成長を目指す

アクセルスペースの今後の成長を牽引することが期待される事業の1つが、来年に近づく7機ものGRUS-3打ち上げだ。成功すればAxelGlobeにおいて使用可能な衛星数が格段に増え、地球観測能力のキャパシティ・性能ともに大きく向上する。そして軌道上運用が開始されれば、撮影の高頻度化や撮影面積の拡大、撮影データの多様化などを実現し、サービス向上による売り上げ拡大が想定されるという。

また一方のAxelLiner事業については、これまで政府からの受託案件が多かったために利益率の面で課題を残していたものの、政府案件における獲得技術やノウハウを活用しつつ、急拡大する民間企業による宇宙利用ニーズを獲得していくことで、収益性の面でもさらに効率的な拡大を図る計画とのこと。汎用的な小型衛星バスを使用することで小型衛星の開発を加速させる同事業の価値を大きくていきたいとする。

また中村CEOは会見の中で、「今日の上場をゴールではなく“スタート”と捉え、さらに先の成長につなげていくことで、小型衛星の可能性を世の中に示していきたい」と語っている。

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    会見で今後の事業展望を語る中村友哉CEO