茨城大学と国立天文台の両者は、アルマ望遠鏡の公開データを用いて原始星「WSB 52」の周囲の原始惑星系円盤とその付近の構造を再解析。その結果、一様に膨張するバブル構造と、それに巻き込まれて変形してしまった原始惑星系円盤を見つけたと8月5日に発表した。

  • 衝撃波によって形が歪められた原始惑星系円盤のイメージ
    (C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Aizawa et al.
    (出所:国立天文台 Webサイト)

同成果は、茨城大 基礎自然科学野の逢澤正嵩助教、同・百瀬宗武教授、茨城大 理工学研究科の折原龍太大学院生(現・東京大学大学院 理学系研究科 特任研究員)らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

恒星は分子雲のガスが重力によって集まることで誕生する。ガスは角運動量を保ちながら回転しつつ恒星に落ち込むため、その周囲には原始惑星系円盤が形成される。この円盤内で塵やガスが集まり、最終的に惑星が誕生すると考えられている。ただし、恒星が形成される際にすべてのガスが落下するわけではない。その多くは、ジェットやアウトフローとして放出され、再び周囲の星形成環境へと戻っていく。

アルマ望遠鏡は世界最高の電波望遠鏡であり、原始惑星系円盤の観測にも適している。これまでにも、数多くの原始星の観測に用いられてきた。そのため、研究チームは今回、原始惑星系円盤がすでに確認されていた原始星WSB 52の観測データを再解析することにした。

再解析の結果、WSB 52の原始惑星系円盤の近くに、爆発的に膨張するバブル構造が新たに発見された。詳細な解析から、このバブルが恒星付近に衝撃波面を作り、その衝突の結果として原始惑星系円盤が歪み、さらには円盤の一部のガスが吹き飛ばされている様子も捉えられた。類似の膨張バブルは、可視光や近赤外観測で他の原始星周辺でも報告されていたが、バブルと円盤との衝突にまで至った事例はこれまでになく、理論的にも予想されていなかった発見だという。

次に、原始惑星系円盤とバブルの空間的な関係が解析され、バブルの中心が円盤の回転軸上に位置することが判明した。この配置とバブルの形状・エネルギーを総合的に考慮すると、数百年前、WSB 52から放出された高速度ジェットが冷たい物質と衝突してそれを圧縮し、圧力上昇により生じた爆発で膨張バブルが形成されたとの結論に至った。

また、バブルの中心が恒星から遠ざかるような運動を示していることから、爆発は中心星のより近傍で起こったと考えられる。したがって、形成直後のバブルの衝突による影響は現在よりもはるかに強大であり、現在のWSB 52の原始惑星系円盤は、その影響を受け続けてきた結果だと考えられている。

  • (左)WSB 52の12COガス輝線画像。多様な波長における放射を示す。破線は膨張バブルによるモデルを、赤い星はWSB 52の位置を表す。パネル0には連続波による原始惑星系円盤の観測画像の拡大図が示されている。パネル7と8では分子雲内の前景による影響が強く見られる。(右)今回発見された現象の断面概念図。左図番号に対応する膨張バブル(赤)の高さが右図に示されている
    (C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Aizawa et al.
    (出所:アルマ望遠鏡日本語Webサイト)

  • (左)WSB 52の原始惑星系円盤からの12COガス輝線放射。円盤の歪みはバブルとの衝突によって生じたと考えられる。(右)円盤における恒星重力からの脱出速度を超える高速度成分。円盤からのガスの流れを表していると考えられる
    (C)ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Aizawa et al.
    (出所:アルマ望遠鏡日本語Webサイト)

これまで、恒星からのジェットは、主に物質やエネルギーを周辺環境へ間接的に供給する役割が注目されてきた。しかし今回の研究により、ジェットがバブルを介して原始惑星系円盤そのものに直接的な衝撃を与えうることが実証された。もし今回のような爆発的膨張バブルが原始星で普遍的に発生しているとすれば、太陽系を含む多くの惑星系形成過程に大きな影響を及ぼしてきた可能性がある。今後の研究で、さらに爆発現象の頻度と円盤への影響を詳しく調べていく必要があるとした。

今回の研究をリードした逢澤助教は、「公開データを再解析している最中、偶然にも今回の現象を発見しました。SFなどでビームを打って物を破壊した時に、爆発してその破片などが飛び散って自身の方に跳ね返ってくるという場面があるかと思いますが、似たようなことが実際の天体現象でより荒々しく起きています。今回の発見を通して、改めて自然は人間が考えているよりはるかに複雑であることを実感しました。今後の研究で、星・惑星系形成への影響を更に調べていければと思います」とコメントしている。

【動画】今回の研究成果を哨戒する公式動画「恒星ジェットが生む爆発に巻き込まれた原始惑星系円盤」。原始星からのジェットが分子雲ガスと衝突してバブルを生み出し、バブルが作った衝撃波が原始惑星系円盤の形を歪めていく一連の過程が動画にされている。再生時間0分15秒
(出所:YouTube ALMAJapanChannel)