グーグルは7月15日、都内でGoogle for Educationに関する説明会を開催した。説明会ではGemini for Educationの最新機能や自治体向けの新プログラムが紹介された。また、三重県立名張青峰高等学校 情報科教諭の向山明佳氏が同校における事例が語られた。

生成AIが教育現場にもたらす変革

冒頭、Google for Education 営業統括本部 本部長の杉浦剛氏は「生成AIが働き方も含めて転換点を迎えており、この変革期にあたり教育現場もAIが子供たちの可能性を最大限に引き出せる可能性がある。昨年12月に文部科学省が公表した『初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン』の中でも、授業内外での幅広い生成AIの活用が想定されており、どのように“学び”を変革していくかという時代を迎えている」と述べた。

  • Google for Education 営業統括本部 本部長の杉浦剛氏

    Google for Education 営業統括本部 本部長の杉浦剛氏

そのうえで同氏は「学習において生成AIに安易に聞いたら、すぐに答えを出してくれるということではない。われわれが重要視しているのは、どのように問題に取り組み、その過程を大事にするかということ。主体的な学習や認知的負担の軽減、メタ認知の深掘り、好奇心を刺激することで学習者に対応し、学びのプロセスを深く理解しアウトプットにつなげる過程で、AIは多くの場面で支援できる」と話す。

こうした状況下において、杉浦氏はアップデートされた機能を紹介。まず、4月にGeminiがGoogle for Educationのコアサービスに含まれたことで、Geminiアプリとして「Gemini for Education」に加え、ノートアシスタントツールの「NotebookLM」が利用可能になった。

  • 教育向けにGeminiアプリが利用可能になった

    教育向けにGeminiアプリが利用可能になった

Geminiアプリでは高性能モデル「Gemini 2.5 Pro」が利用でき、高度な推論やコーディング、長文コンテキスト処理に優れ、エンタープライズレベルプライバシー保護と安全性を重視して設計されている。強化されたインタラクティブな作業スペース「Canvas」や「Deep Research」などの機能を活用できるほか、NotebookLMはアップロードした自分だけの資料に対して情報の整理や分析を実施する。

また、教育と学習のためのAIツール「Gemini in Classroom」では、教育者向けにGoogle Classroomから30以上の一般的なタスクをGeminiタブで用意(英語のみ)したほか、数カ月以内の提供予定でクラスの教材を基盤としたNotebookLMのノートブックを配布することで、児童・生徒が学習を深められるようにするという。

加えて、Geminiで特定の目的や役割に特化したAIを作るためのテンプレート機能「Gem」を作成・共有することを可能(数カ月以内に提供予定)とし、教師が作成したGemで児童・生徒の主体的な学びをサポートできるという。

  • 「Gemini in Classroom」の概要

    「Gemini in Classroom」の概要

7月末には児童・生徒向けにプロンプトライブラリの利用が可能となり、同下旬には動画学習コンテンツの公開を予定。加えて、Google for Education GIGA スクールパッケージの導入自治体向けに無償で利用できる、自治体や教職員のための活用推進プログラムとして「Kickstartサポート」に生成AI研修が追加された。

  • AI学習のためのツール群

    AI学習のためのツール群

さらに、日本独自の取り組みとして「Geminiパイロット自治体プログラム」をスタート。教育現場における生成AIの新たな可能性を拓くためのプロジェクトであり、生成AIの活用を推進して働き方や学びの変革を推進していく自治体を募集。

意欲の高い5つの自治体と連携し、教員の業務効率化や学習準備のサポート、児童・生徒の新たな学びの実践を創出する。グーグルでは教員向けのGemini活用トレーニング/AI活用アドバイス、定例会議の実施など、プロジェクトを推進するための支援を行う。応募期間は7月22日~8月29日までとなり、9月上旬の選考を経て、プログラム期間は同中旬~2026年3月、同月末に成果発表を実施する。

名張青峰高校におけるICT・AI教育の実践

続いて、三重県立名張青峰高等学校の向山氏が登壇し、同氏は「“普通の学び”がどのように変化していくのかということを知っていただきたい」と述べ、同校における活用例を解説した。

  • 三重県立名張青峰高等学校 情報科教諭の向山明佳氏

    三重県立名張青峰高等学校 情報科教諭の向山明佳氏

同校は2016年に普通科高校として開校し、全員ICTを掲げている。2018年にGoogle Workspace for Educationを導入し、2021年にChromebookのBYAD(Bring Your Assigned Device)を開始、Google for Educationの事例校に認定されており、2022年に全端末をChromebookにしている。

  • 三重県立名張青峰高等学校の概要

    三重県立名張青峰高等学校の概要

向山氏は「ICTは文具であり、先生が使いなさいと指示するのではなく、生徒の判断で消しゴムや鉛筆、ノートと同じように使うようにしている。AIを利用するようになってからはAIは道具として自分のやりたいことを実現するためのものであると生徒に話しています」と強調した。

“普通の学校”においてAIを導入していくにあたり、同氏は「正しい手続き」「正しい理解」「情報の共有」の3点をポイントに挙げている。正しい手続きでは保護者への説明、職員への理解、正しい理解については校内ガイドラインの策定、生徒への説明などを行っている。情報の共有では職員会議後に生成AIの活用のプチシェアやAI活用セミナー、Geminiの新機能体験会を実施。

向山氏は正しい理解に関して「情報Ⅰの授業ではLLM(大規模言語モデル)の仕組みを説明し、理解して活用していくべきということを全員に説明している。その中でハルシネーション探しというものを実施し、生成AIを最初に使うときに『自分の推しについて教えて』と入力してもらう。そうすると生徒たちは自分の推しについては熟知しているため、ハルシネーションの判断が付く。これをGoogleフォームに集めて全員で共有し、どのようにAIを使っていくかというところからスタートする」と説く。

  • 三重県立名張青峰高等学校の概要

    AI導入に向けた3つのポイント

AI時代の普通科高校のあり方、“普通の学び”の変化

そして、実際の活用例について話は移った。現在、すべての学校で教科の枠を超えて生徒が主体的に課題を発見・解決する「総合的な探求の時間」があるものの、多くの学校で進め方が課題になっているという。

そこで、同校はAIを活用している。同氏は「生徒は百人百色それぞれ多くの探求テーマを考えてくれる。ただ、各教員がすべての生徒をサポートするのは限界があることから、AIをテーマ設定のときや探究活動のサポートに活用している。また、生徒自身もプロンプトに難を抱えているため、シチュエーションごとのプロンプト集を共有している」と話す。

さらに、生徒が提出したレポートに対するフィードバックもGemを活用して充実化を図っている。Gemを活用し、カスタム指示で役割(ex.情報化の教員など)やフィードバックの観点内容をルーブリックで登録し、生徒が提出したレポートを入力し、200字ほどのフィードバックを出力するようにしている。これを繰り返すことで、生徒はフィードバックにしたがってレポートの質が向上するなどの効果が表れている。

こうした取り組みにより“全員がクリエイター”になったという。普通科高校は専門高校とは異なり、創作の時間が1週間に2時間ほどと多くを取ることができない。向山氏によると、自分が作りたいものが形になると面白くなり明らかに創作意欲が向上し、生成AIを使うことで全員がクリエイターになることができたと同時に、クリエイターとしての責任を教える機会にもなっているとのことだ。

  • 全員がクリエイターになったという

    全員がクリエイターになったという

最後に同氏は「AI時代の普通の学校として、自発的な生徒を育てたい。AIによって従来以上の学びが可能となり、生徒の挑戦意欲を引き出す教育ができればと考えている。生徒の実現したいレベルをAIで向上し続けて、普通の学校であっても創作の楽しさや責任を学ぶ機会の提供、そして常に疑問を持ち続ける学びを実現していくことが望ましい。生徒たちは生成AIを身近に感じており、AIによりさまざまな可能性が増えていくことから、普通の学びが面白くなる」と述べていた。