酸化ガリウムのMOSFETで10A超の動作を実現

FLOSFIAは7月1日、酸化ガリウム(α-Ga2O3)を用いた次世代パワー半導体として、p層(導電型p型半導体層)の改良を通じて、MOSFETでのノーマリーオフ特性を有する10A超の大電流動作(ドレイン電流14.3A、ゲート電圧15V時)を実現したことを発表した。

  • 酸化ガリウムMOSFET

    今回の研究開発で試作された酸化ガリウムMOSFETの模式図と実チップの写真 (出所:FLOSFIA)

同社はこれまで、独自の「ミストドライ」法により、酸化ガリウム半導体におけるp層形成技術の開発を進めてきており、すでにJBS(ジャンクションバリアショットキー)構造ダイオードにおいては製品レベルのサンプル実証を実現している。

今回の取り組みは、さらに難易度が高いMOSFETに材料として高い性能ポテンシャルを引き出すことが期待できるp層の適用を目指して独自技術の改良と、それに伴うMOSFET構造形成プロセスを開発し、デバイスへ組み込むことを目指したもの。

酸化ガリウムでSiC並みの放熱特性を実現

具体的には、ミストドライ法で作製した高品質なα-Ga2O3を用いて耐圧600V級デバイスのエピタキシャル層を形成し、微細化・低オン抵抗化に有利なトレンチゲート型MOSFETを作製。MOSFETのオン抵抗の大きな部分を占めるチャネル領域の抵抗を低減するために、p層を活用した新規開発のMOS構造形成プロセスを適用したほか、約10μmに薄膜化したα-Ga2O3 MOSFETを金属支持基板に転写することで、高い通電能力とSiC並みの高放熱特性を持つ縦型素子構造を実現。その結果、ゲート電圧15Vにおいて、ドレイン電流14.3Aの通電に成功したという。また、ゲート電圧0Vではドレイン電流が流れないノーマリーオフ特性を実現したとするほか、通電エリアの特性オン抵抗は17mΩ・cm2であったとする。

  • 開発されたトレンチゲート型MOSFETの断面模式図

    開発されたトレンチゲート型MOSFETの断面模式図と実際に試作されたMOSFETのトレンチゲート部分の電子顕微鏡写真、ならびにドレイン電流-ゲート電圧特性 (出所:FLOSFIA)

なお、同社では今後、今回の成果を基盤に耐圧構造の導入、高耐圧化および製品化に向けた信頼性確保などの研究開発を加速していき、SiC-MOSFETを超える低損失性能を目指していくとしている。