日本電信電話(以下、NTT)は4月25日、IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)APN(All-Photonics Network)を構成する各機能部が連携することでオンデマンドで光パスを提供する技術を実証したことを発表した。

これにより、将来のAPNで実現する新たな接続形態として、APNに機器を接続するだけで任意の場所から必要な時だけタイムリーに大容量・低遅延の光パスを利用できるとともに、既存ネットワークを有効活用した効率的な光パスの提供も可能になるという。

従来技術の課題

現在、ユーザーに光パスを提供する際には作業者を現地に派遣し、データ送受信機を設置するとともに両側の作業者とオペレータが連携して光パスの設定作業を実施する必要がある。そこで、よりタイムリーに光パスを提供するためには、作業者を現地に派遣することなく、オペレーターから送られてきたデータ送受信機をユーザーの都合の良いタイミングでAPNに接続するだけで自動的に接続を検知して光パスを設定できる技術が求められる。

また、より広範囲に光パスを提供するために、既設のネットワークに敷設されているさまざまな種類の光ファイバーを使う必要があるが、光ファイバーの種類によって光パスに使われる最適な波長帯が異なるため、最適な波長帯に光パスの波長を変換して提供できるようにすることも求められる。

これらの課題を解決するための技術として、NTTではPhotonic Gateway(Ph-GW)、Photonic Exchange(Ph-EX)、APNコントローラの研究開発を進めてきた。

  • 光パス設定作業のイメージ

    光パス設定作業のイメージ

実証の概要と研究の成果

実証では、映像リモートプロダクションを想定して、Ph-GW、Ph-EX、APNコントローラを使用した実験を実施した。実証の結果、遠隔に設置されたデータ送受信機がAPNに接続された際にプラグ&プレイ機能により接続情報を自動検出し、映像拠点と映像編集拠点間で光パスをオンデマンドに接続することに成功した。これにより、いつでも必要な時に光パスを提供できることが確認できたという。

また、このときAPN内の光パスを効率よく収容するため、Ph-EXの波長帯変換機能を適用することで、その伝送区間では利用していない波長帯に波長変換を施して信号伝送を実施した。

オンデマンドでの光パス開通動作として実証した手順は以下の通り。まず、データ送受信機へ光ファイバーを挿入。次にPh-GWがデータ送受信機に光ファイバーが接続したことを検知して、APNコントローラへオンデマンドでの光パスの開通要求を送信。その後、APNコントローラはPh-GWから受信した光パスの開通要求に応じて、Ph-GW、Ph-EX、データ送受信機にパス設定要求を送信することで、関連する光伝送装置をリアルタイムで制御し、オンデマンドに光パスを設定開通。

  • オンデマンドでの光パス設定機能実証系と手順

    オンデマンドでの光パス設定機能実証系と手順

これらの動作をAPN機器6台で構成されるネットワークに対して行った結果、光ファイバー挿入側のデータ送受信機からの光信号をAPN機器で検出した後、光パスが自動で設定され、対向側のデータ送受信機にてAPNの光パスを通過してきた光信号を検出できた。さらに、ネットワーク内にはPh-EXにおける波長帯変換技術により効率よく光パスを収容可能としている。

  • オンデマンドでの光パス設定動作実証結果

    オンデマンドでの光パス設定動作実証結果

  • 波長帯変換機能実証結果

    波長帯変換機能実証結果