HuaweiのAIチップ「Ascend 910C」の出荷時期は5月以降の見込み
米国トランプ政権がNVIDIAの中国向けAIチップ「H20」に対する事実上の輸出禁止を命じた一方、中HuaweiのAIチップに対する動きが活発化してきている。同社はH20の競合品となる「Ascend 920」を発表したほか、前世代品「Ascend 910C」についても5月より量産・出荷が開始される見込みだと複数の海外メディアが報じている。
Ascend 910Cは、TSMCの7nmプロセスで製造された「Ascend 910B」を2個1つのパッケージに統合したものとされており、H20よりも性能はやや劣るとみられている。しかし、DeepSeekにより、安価なAIチップでも最先端のAI開発が可能であることが示されたことからH20の需要が増加したことから、Ascend 910CもH20の代替品として中国顧客から選ばれる可能性がある。
次世代のAscend 920は2025年後半より量産の可能性
Huaweiは4月10日に開催したパートナーコンファレンスにて、関係者に対してAscend 910シリーズの後継となる「Ascend 920」の仕様の一部を伝え、2025年後半にも量産を開始する模様だと海外メディアが報じている。
Ascned 910シリーズは当初、中SOPHGO(厦門算能科技)がTSMCに7nmプロセスで製造委託していたとされるが、その後、SMICがHuaweiから製造受託し、ArF液浸リソグラフィによる7nmプロセスで製造されている。これに対してAscend 920は、最初からSMICの6nmプロセスが採用されたという。6nmは7nmの性能改良版と言えるが、EUVが使えないため工程数が増えてしまい、量産に向けた歩留り向上が課題になっている模様である。
BF16で900TFLOPS超の演算性能を提供
Ascend 920の仕様としては、PCIe 5.0や次世代の高スループットインターコネクトプロトコルをサポートし、大規模なAIクラスタにおけるノード間の通信速度向上や遅延削減が図られているという。
HBM3規格のメモリを搭載し、4000GB/sのメモリ帯域幅を実現することでBF16半精度浮動小数点演算において900TFLOPS超の性能を目指しているとされる(前世代となるAscend 910CはHBM2E採用で3200GB/s帯域幅、780TFLOPS)。
また、AIモデルの学習に焦点を当てており、TransformerモデルやMoE(Mixture-of-Experts)モデルに対するテンソルアクセラレーションエンジンを改良し、910C比で全体の学習効率が30~40%向上すると見積もられているという。
Huaweiは、同イベントないでは前世代チップ比で30~40%高速化されていると主張したようで、仕様上の性能としてはNVIDIAのH20よりも優れている可能性が高いが、まだ製品が出ていないことから、実測値による比較ではない点に注意が必要である。
米国政府の対中半導体輸出規制が強化されていく中、Huaweiをはじめとする中国勢によるAIチップ開発の進化が進められており、規制の影響下にあるNVIDIAは、中国でのビジネスの継続に向けて米中両政府に対するロビー活動を行うなど、水面下での動きを活発化させており、先日はCEOが直々に訪中し、中国政府の要人との面会なども行っている。