不揮発性メモリで揮発性メモリを超す書き込み速度を実現
復旦大学の研究チームは4月17日、データの書き込み速度400ピコ秒を可能とした新たなフラッシュメモリ「PoX」を開発したことを発表した。
詳細は4月16日付で科学誌「Nature」に「Subnanosecond flash memory enabled by 2D-enhanced hot-carrier injection」というタイトルで掲載された。
メモリの読み書きにかかるアクセス速度は揮発性のSRAMやDRAMがナノ秒オーダーである一方、不揮発性であるNAND型フラッシュメモリは100マイクロ秒前後と差がある。その間を埋める次世代不揮発性メモリとしてMRAMやReRAM、PCM、FeFETなども存在するが、それでもSRAMに匹敵するような速度と容量の両立には至っていない。
2次元材料の活用で高速書き込みを実現
研究チームでは今回、そうしたフラッシュメモリを高速化する手法として、2次元ディラック材料であるグラフェンを活用して2次元ディラックバンド構造と弾道輸送特性を組み合わせることで、2次元チャネルのガウス長を調整し、チャネル電荷をフローティングゲートストレージ層に重ねて注入する手法を考案。このスーパーインジェクション機構と呼ぶ手法を採用することで、電子を加速し、従来の制限を破ることに成功したという。
実際に、理論モデルに基づいて開発された新構造のフラッシュメモリデバイスでは、書き込みおよび消去が1ナノ秒未満の400ピコ秒でできることが示されたという。これは1秒あたり25億回の演算に相当する値だという。また、耐久性としても5.5×106を超すサイクルが可能なことも確認したとする。
なお、研究チームでは、この技術を「Dawn」と命名。試作されたフラッシュメモリはキロバイトオーダーであったが、今後、3~5年をかけて数十MBレベルへと技術を拡張し、企業へのライセンス供与を進め、産業での活用を目指すとしている。