NTTファシリティーズは4月16日、データセンター冷却システムの検証施設およびショールームとして機能する「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(略称:DC Cooling Hub)」を同月22日から本格運用を開始することを発表し、施設をメディア向けに公開した。

同施設では生成AI向けデータセンターにおいて主流になると予想される、液冷サーバを利用した効率的な液冷冷却システムを検証するとともに、2025年5月中旬以降はデータセンターの構築や設計、施工を検討するデータセンター事業者や建築設計事務所・施工会社などの見学も受け入れる。

DC Cooling Hub開設の背景

生成AIの利用増加に対応するデータセンターでは、高性能かつ高発熱のGPUサーバを効率的に冷却する仕組みが求められる。そのために、冷却液をサーバに直接送り込みコールドプレートで冷却する、液冷方式サーバの導入が進むと考えられる。

液冷方式サーバは、液冷サーバへ冷却液を送り込むCDU(Coolant Distribution Unit)と液冷用SUS(ステンレス)配管、およびCDUへ冷却液を供給する熱源機器により構成される。

特に熱源機器は、液冷方式サーバが放熱する熱量をより効率的に冷却可能なソリューションの一つとして、チラーを必要としない液冷空調方式(チラーレス液冷空調システム)の普及も予測されている。こうした高効率な空調システムは消費電力量が少なく、環境性能が高いといった特徴も持つ。

NTTファシリティーズはオイルフリーチラーやチラーレス液冷空調システムを含む多様な空調機器を展示するほか、模擬負荷装置(空冷420キロワット、液冷360キロワット)を設置する。同社は稼働中のデータセンターにおける各種空調の不具合の原因究明、構築・保守技術者の育成を目的として、NTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)内にDC Cooling Hubを構築した。

  • 多様なデータセンターのニーズに対応する

    多様なデータセンター設備のニーズに対応する

NTTファシリティーズでデータセンター事業を担当する由佐卓也氏は「見学可能な実機のラインアップを充実させて持続的な事業拡大を図るとともに、負荷のある実環境に近い設備でトラブルシューティングや技術者育成を実施することで事業基盤の盤石化を狙った。大型データセンターに要求される多様な空調商材を提供可能なショールームとして設計した」と、DC Cooling Hubを紹介していた。

  • NTTファシリティーズ データセンターエンジニアリング事業本部 プロダクト部長 由佐卓也氏

    NTTファシリティーズ データセンターエンジニアリング事業本部 プロダクト部長 由佐卓也氏

DC Cooling Hubでは10種の冷却設備を実証・展示

DC Cooling Hubでは同社が取り扱う空調機器の実機と、AIデータセンターを想定した模擬負荷を設置する。「データホールエリア」「空調機器設置エリア」「熱源機器設置エリア」の3エリアで構成される。

  • DC Cooling Hubの全体図

    DC Cooling Hubの全体図

データホールエリア

データホールエリアに設置したサーバラック架列には、模擬負荷(空冷分420キロワット、液冷分360キロワット)を搭載。CDUから供給する冷却液を用いる液冷サーバを模した模擬負荷の冷却(液冷方式)に加えて、気流による空冷方式も検証できる。

  • サーバラックの負荷装置

    サーバラックの負荷装置

空調機器設置エリアに設置した前面メンテナンス型の大容量CDUから液冷用模擬負荷までの二次配管(TCS)は、中国・東南アジアを中心に液冷空調を提供するEnvicoolの「液冷用SUSプレファブ配管」を使用している。

  • 液冷用SUSプレファブ配管

その他、小規模な生成AI用基板向けにパッケージ化された「スキッド型CDU」や高発熱のGPUを搭載した空冷サーバを冷却する「リアドア型空調機」を設置する。

  • STULZのリアドア型空調機

    STULZのリアドア型空調機

空調機器設置エリア

空調機設置エリアには、STULZ製の「水冷下吹型空調機」「水冷壁吹型空調機」「水冷横吹型空調機」、および直接外気冷房を併用可能な「外気冷房併用型空調機」を設置。さらには、同社が構想する「次世代型データセンター」に適した日本市場向けの大容量CDUも設置する。

  • 水冷横吹型空調機、水冷下吹型空調機、外気冷房併用型空調機のファン

大容量CDUは敷地面積が小さい日本国内におけるハイパースケールデータセンターの面積効率を最大化すべく、日本市場向けにSTULZと共同開発した。機器の前面と背面の双方にメンテナンススペースを必要とする一般的なCDUとは異なり、メンテナンススペースを機器の前面のみとした。これにより、CDUを空調機械室の壁面に高密度に並べて設置可能としている。

  • 前面メンテナンス型の大容量CDU

    前面メンテナンス型の大容量CDU

熱源機器設置エリア

熱源機器設置エリアには、SMARDTのオイルフリーチラー「AFシリーズ」(2025年以降国内販売開始予定)と、Evapcoのハイブリッドドライクーラー「eco-ATWB-H」を設置する。ハイブリッドドライクーラーにはDistech ControlsのPLCを用いた独自のコントローラーが付属しており、自律運転が可能。

  • SMARDTのオイルフリーチラー

    SMARDTのオイルフリーチラー

  • Evapcoのハイブリッドドライクーラー

その他、熱源機器と各空調機とを接続する一次配管にはGF Pipingの断熱材付きポリエチレン配管「COOL-FIT」、熱源機器周りの一次ポンプにはNewark Engineeringが提供するArmstrong Fluid Technology製のインバータ内蔵コンパクト縦型インラインポンプを設置している。

  • DC Cooling Hubで見学可能な設備

    DC Cooling Hubで見学可能な設備