住友ゴム工業は、タイヤ製造の主要拠点である白河工場に、水素製造装置「やまなしモデルP2Gシステム」を導入し、4月より稼働を開始。24時間稼働させることで年間最大約100トンの水素を製造でき、輸送を含むサプライチェーン全体で年間約1,000トンのCO2排出量削減につながる見込みだという。

  • 水素製造装置「やまなしモデルP2Gシステム」

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から助成を受け、同システムの開発を統括してきた山梨県との合意のもと、住友ゴムが同システムを導入し活用を進めるもの。

住友ゴムでは、乗用車・トラック・バス用タイヤを製造する白河工場(福島・白河市)を「脱炭素グランドマスター工場」と位置づけている。やまなしモデルP2Gシステムで製造されたグリーン水素を、従来の配達水素、系統電力、場内太陽光発電、既存燃料とともに、同工場における5つのエネルギー源のひとつとして活用し、同システムを用いたグリーン水素活用によるタイヤ製造のノウハウを蓄積。将来的には、国内外の他工場への展開も視野に入れているという。

  • 住友ゴム 白河工場。2024年12月末時点の生産能力は10,350トン/月(新ゴム消費量)

なお前述のサプライチェーン全体には、自社が直接排出する温室効果ガス(スコープ1)、他社から供給された電気や熱の使用により間接排出する温室効果ガス(スコープ2)、輸送や製品販売後の使用・廃棄時など、自社の活動に関連するが直接管理していない外部が排出する温室効果ガス(スコープ3)を含む。

やまなしモデルP2G(Power to Gas、ピー・ツー・ジー)システムは、山梨県が中心となって開発を進めてきた、次世代型のエネルギーシステム。太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用して水を電気分解することで、環境負荷の少ないグリーン水素(再生可能エネルギー由来の電力を用いてCO2排出ゼロで生成された水素)を製造できるとする。P2Gシステムは安定的な水素供給を実現し、今後さまざまな産業分野において脱炭素化を加速させる技術として、国内外から期待されているという。

住友ゴムは2021年、サステナビリティ長期方針として「はずむ未来チャレンジ2050」を策定し、持続可能な社会の実現に向けた取り組みをグループ一丸となって推進。そのなかで「CO2排出量の削減を推進する企業」をありたい姿に掲げ、2050年のカーボンニュートラル達成をめざしている。

この目標に向けた取り組みの一環として、水素活用に挑戦。NEDOと福島県から支援を受け、白河工場において2021年8月から2024年3月まで、水素を活用したタイヤ製造の実証実験を行っている。

具体的には、福島県内の水素製造拠点から供給される水素を使い、水素ボイラーで発生させた高温・高圧の蒸気を、タイヤ製造の最終段階である加硫(かりゅう)工程で活用するというもの。この工程は、加熱と加圧によってゴムに弾性を与え、タイヤとしての形状と性能を完成させる重要なプロセスだという。

2023年1月には、水素エネルギーと太陽光発電を組み合わせることで、製造時(スコープ1、2)におけるカーボンニュートラルを国内で初めて達成した量産タイヤを生産開始した。

こうした成果を含む実証結果を踏まえ、2024年5月、山梨県とグリーン水素の活用による脱炭素化に係る基本合意書を締結し、白河工場へのP2Gシステム導入を決定。水素を自社工場内でつくることで、輸送(スコープ3)も含むさらなるCO2削減効果を期待しているとする。

住友ゴムは、複数の電力源の組み合わせを最適化することで安定した操業を維持しながら、さらなる脱炭素化を推進していく。なお、同社は中部圏水素・アンモニア社会実装推進会議と、水素・アンモニア等のサプライチェーン構築に向けた相互協力に関する基本合意書を3月に締結しており、この合意書のもと、中部圏での水素活用の検討も進めていくとのこと。