国立天文台(NAOJ)は4月10日、「ニュートリノ集団振動」を現象論的に取り扱う手法を採用することにより、集団振動を考慮した3次元超新星爆発シミュレーションを開発して計算した結果、物質の加熱に寄与する電子型反ニュートリノのエネルギーが従来の超新星モデルより大きくなるため、超新星の爆発エネルギーが従来の予言に比べて数倍から10倍ほど増大することを明らかにしたと発表した。
同成果は、NAOJ 科学研究部の森寛治研究員(日本学術振興会特別研究員)、同・滝脇知也准教授らの研究チームによるもの。詳細は、日本天文学会が刊行する学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に掲載された。
超新星爆発は、主に2種類存在する。1つは、連星系における白色矮星が伴星から質量を奪い、チャンドラセカール限界(太陽質量の約1.4倍)を超過することで核融合反応が暴走して発生するIa型だ。もう1つは、太陽のおよそ8倍以上の質量を持つ大質量星が、一生を終える際に迎える重力崩壊によるIb型(水素がない)、Ic型(水素とヘリウムがない)、II型(水素がある)である。
超新星爆発では、星の内部で核融合反応によって合成されたさまざまな元素を星間空間へと放出し、それが新たな星や惑星などの材料となる。さらに、超新星爆発の際に発生する強い衝撃波は周囲の星間ガスを圧縮し、新たな星の誕生を促すこともある。このように、超新星爆発は宇宙における物質の進化を大きく左右する、まさにエンジンともいえる存在だ。このことから、宇宙を構成する物質の起源をより深く理解するためには、超新星爆発のメカニズムを詳細に解明することが極めて重要と考えられている。
そんな超新星爆発は、生物の存在する惑星近傍で発生した場合、その惑星の生物を絶滅させるほどの極めて危険な破壊力を持つ。ビッグバン以降の宇宙における爆発現象としては、「ガンマ線バースト」に次ぐ強力さである(ガンマ線バーストは謎の多い現象だが、その一部はハイパーノバ(極超新星)に起因すると考えられている)。