パナソニック エレクトリックワークス(パナソニックEW)は4月10日、三菱ガス化学と共同で、コンセントなどの配線器具をターゲットとして、CO2から製造したメタノールを原料とする環境配慮型ユリア樹脂を開発したことを発表した。

  • 環境配慮型ユリア樹脂の製造スキームイメージ

    環境配慮型ユリア樹脂の製造スキームイメージ(出所:パナソニック エレクトリックワークス)

  • 環境配慮型ユリア樹脂

    環境配慮型ユリア樹脂(出所:パナソニック エレクトリックワークス)

熱硬化性樹脂の一種であるユリア樹脂は、耐トラッキング性や耐アーク性に優れることから、配線器具の電気火災安全性を支える材料として重宝されており、パナソニックEWで使用している樹脂の約4分の1を占める。しかし同樹脂は、一度硬化すると加熱しても溶けないことから、マテリアルリサイクルができず資源循環が難しい点が課題だった。

そこで今回同社は、ユリア樹脂の原料であるメタノールがCO2から合成可能であることに着目。CO2や廃棄物からメタノールを介してエネルギーや素材を生み出す環境循環型プラットフォーム「Carbopath」をグループ一体となって推進する三菱ガス化学と共同で、ユリア樹脂をカーボンリサイクルする新たな製造スキームを確立したとする。

この新スキームでは、本来であれば大気に排出されるCO2を資源として回収しメタノール原料として使用することで、コンセントを廃棄焼却した際に排出されるCO2の一部を相殺し、炭素資源の循環が可能となる。またCO2を固定化したメタノールを使用することで、ユリア樹脂の製造過程におけるCO2排出量を従来品に比べ約20~30%削減できるとする。なお新スキームにおいては、三菱ガス化学がCO2からのメタノール製造を、そのグループ会社であるMGCウッドケムがメタノールからのホルムアルデヒド製造を、そしてパナソニックグループが原料からのユリア樹脂製造、および配線器具の製造を担う。

  • 環境配慮型ユリア樹脂によるカーボンリサイクルの概要

    環境配慮型ユリア樹脂によるカーボンリサイクルの概要(出所:パナソニック エレクトリックワークス)

またパナソニックEWによると、環境配慮型ユリア樹脂の成形条件や物性は、従来の化石資源由来樹脂と同じとのこと。そのため、今回開発された樹脂を用いて配線器具を製造する場合にも、製造設備の変更なしで同等の品質を実現できるという。

  • 環境配慮型ユリア樹脂と従来樹脂の物性比較

    環境配慮型ユリア樹脂は従来樹脂と同等の物性を有する(出所:パナソニック エレクトリックワークス)

同社は、今回開発された環境配慮型ユリア樹脂を使用した配線器具の導入により、住宅やビルなどの建築物の設備における資源循環に貢献できるほか、建築物の建設・維持管理・解体段階におけるCO2排出量(エンボディードカーボン)も削減できるとする。なお今後は同樹脂以外の材料についても環境への配慮を推進し、サーキュラーエコノミーおよびカーボンニュートラルの実現に向けてさらに取り組みを進めていくとしている。