三菱電機は、鉄道車両などの大型産業機器向け大容量パワー半導体「HVIGBTモジュールXBシリーズ」の新製品として、「耐電圧3.3kV/定格電流1500Aタイプ」を5月1日に発売。ドイツ・ニュルンベルクで開催されるパワー エレクトロニクスの国際展示会「PCIM Expo & Conference 2025」(会期:5月6日~8日)に出展する。

  • HVIGBTモジュールXBシリーズ(耐電圧3.3kV/定格電流1500Aタイプ)。HVIGBTは、High Voltage Insulated Gate Bipolar Transistor(高耐電圧絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)の略称

独自のダイオードとIGBT素子の採用に加え、独自のチップ終端構造を採用して耐湿性能を向上させたのが特徴。鉄道車両などの大型産業機器向けインバーターの高効率化と信頼性向上に寄与するとしている。

新製品では、カソード側の電子移動度を最適化した三菱電機独自のRFC(Relaxed Field of Cathode)ダイオードと、キャリア蓄積効果を利用した独自のCSTBT構造を採用したIGBT素子を搭載。

従来製品と比べて、トータルスイッチング損失を約15%低減し、インバーターの高効率化に寄与するという。また、逆回復時安全動作領域における耐量(RRSOA耐量)を従来比で約25%拡大し、インバーターの信頼性向上にも寄与するとのこと。

チップの終端領域にも同社独自の構造を採り入れており、p型半導体領域の間隔を徐々に広がるように最適配置した新たな電界緩和構造と、半絶縁膜を半導体領域に直接接触させ、安定して電荷を逃がす表面電荷制御構造を採用。

これにより、終端領域を約30%抑えながら、従来品Hシリーズの耐電圧3.3kV/定格電流1200A製品の約20倍まで耐湿性能を強化。高い湿度環境などで使用されるインバーターの安定稼働に寄与するとしている。

大型産業機器向けのパワー半導体モジュールは高出力・高効率であることに加えて、気温や湿度の変動が大きい屋外などの厳しい環境下でも安定動作する耐湿性能が求められる。

パワー半導体に搭載されるチップは、電力を変換・出力する領域(有効領域)と、電圧を安定的に保持する役割の終端領域(無効領域)に分けられ、湿度が高い環境では、水分などの影響により保持電圧が低下しないように終端領域を広くするチップ構造が必要。

しかし、終端領域を広くすると相対的に有効領域が狭くなるというトレードオフ関係にあるため、パワー半導体チップの高出力・低損失の性能向上と耐湿性能の両立には課題があった。三菱電機が今回発売する新たなパワー半導体では、独自構造を採用することでこれらを解決したかたちだ。