本田技研工業の研究開発子会社である本田技術研究所(以下「Honda」)は4月4日、宇宙での使用を想定して開発を進める循環型再生エネルギーシステムのコア部品の試験を国際宇宙ステーション(ISS)で実施するため、米国の航空宇宙関連企業であるSierra Space(シエラスペース)およびTec-Masters(テックマスターズ)と契約を締結したことを発表した。
長年にわたり水素技術の研究開発に取り組むHondaは、同社独自の高圧水電解システムと燃料電池システムを組み合わせ、太陽エネルギーと自ら継続的に酸素・水素・電気を製造する循環型再生エネルギーシステムを開発中だ。Hondaの高圧水電解システムは、水素圧縮のために通常必要とされるコンプレッサが不要のためコンパクトという特徴を有する。また循環型再生エネルギーシステムは、蓄電池に比べて質量あたりのエネルギー密度が高く、月面探査に向けた宇宙輸送において大きな課題とされる積載容量・質量の低減にも貢献できるとする。
Hondaによると、月面で同システムを利用し人間が生活する場合、昼の間に太陽光発電で発電した電気を用いて稼働した高圧水電解システムにより水を電気分解し、酸素と水素を製造してタンクに貯蔵するとのこと。そして夜の間はそれらの酸素・水素を使って発電し、居住スペースに電力を供給することを想定しているという。
そして同社は今般、循環型再生エネルギーシステム開発の一環として、ISSの微小重力環境下において循環型再生エネルギーシステムのコア部品である水電解セルの試験を実施し、重力の環境変化が水電解セルの反応に与える影響を検証することで、技術信頼性の向上を目指すとする。またその試験実施に向けては、Hondaの宇宙ミッションにおける主要インテグレータであるシエラスペース、そしてISSの技術エキスパートであるテックマスターズと契約を締結。両社のサポートを受けながらISSでの試験サービスを利用して行うとした。
なおHondaは2024年、米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーター内にSpace Development Divisionを新設。同部門は、米国の宇宙関連企業・機関とHonda研究開発部門とのパートナーシップの締結やプロジェクトマネジメントを担うといい、今回のプロジェクトでもプロジェクトマネジメントを担当するとしている。