ServiceNow Japanは4月2日、3月中旬に発表したNow Platformの最新版「Yokohama」について記者説明会を開催した。Now Platformは、同社がSaaS(Software as a Service)で提供する業務アプリケーションの基盤となるクラウドプラットフォームであり、製品バージョンアップを年2回実施し、Yokohamaは2025年最初のバージョンアップだ。
2024年の振り返り
まず、ServiceNow Japan 執行役員社長の鈴木正敏氏が昨年の振り返りと2025年の国内ビジネスの戦略に関して説明。
グローバル全体の売り上げは109億8400ドル(日本円換算で1兆6000億円)となり、鈴木氏は「日本法人の数値は規程上公表できないが、素晴らしく好調な1年となり、グローバル全体の成長率を大きく上回り、日本市場が成長していることが大きなポイント」と振り返った。
業界向けビジネスの加速では製造、金融業界向けビジネスが対前年比で成長し、中央省庁・自治体のDX加速に向けて、公共向けビジネスを包括的に強化。“Beyond CRM”進化した顧客体験の実現については、CRM(顧客関係管理)ソリューションとしての市場認知の高まりに加え、生成AIの機能群「Now Assist」を組み合わせた次世代コールセンターへの採用などが進展。
日本発のパートナーエコシステムの確立では、日本企業とのパートナーシップ強化とともに、トレーニング受講者数、認定資格者数が前年比で40%以上増加した。中堅/成長企業市場での本格的事業展開に関しては、専門営業体制の確立で新規顧客の大幅増加、市場向けのパートナー企業との提携を推進した。
お客さまファーストの価値提案・支援では、プロジェクトの本番稼働が開始し、価値最大化を支援するServiceNow Impactサービスの採用も増加したという。ビジネス上での生成AIの価値創出については、昨年9月に発表した「Xanadu」で日本語環境におけるNow Assistのフルサポート、全社ビジネスでのAI活用を支える次世代のデータベースエンジン「RaptorDB」と、ワークフローやAIで活用する組織全体のデータを統合する「Workflow Data Fabric」の提供を開始した。
2025年はAIプラットフォーマーと次世代CRMを軸とした日本市場でのビジネス展開
こうした状況をふまえ、2025年の日本法人における重点取り組みとして「AIプラットフォーマーとしての進化」「次世代CRM - 顧客体験の革新」の2つを軸に「業界向けビジネスのさらなる加速」「パートナーとの戦略的協業の拡充」「新規顧客開拓への注力」「顧客支援体制強化による総合力の底上げ」の6つの領域を挙げている。
AIプラットフォーマーとしての進化では、現在の日本における産業・社会においてAIは重要な変革ドライバーになることから、それをサポートする。
鈴木氏は「歴史的にITは経営基盤の強化からスタートし、その後は、従業員・顧客体験の向上という観点で活用されてきた。現在では全社IT基盤でビジネス全体にわたり日常的にAIを活用しており、経営基盤の強化(データ)、従業員・顧客体験の向上(業務プロセス)、AIの3つの要素を単一の仕組みで実現するものが次世代のAIプラットフォームだ。その点、当社のプラットフォームは、AIのインサイトを即時的に業務に活かすアクションと一体化することが可能だ」と述べている。
具体的には、業務に使えるさまざまなAIのユースケースが具備され、他システムとのデータ連携口が事前定義されており、ワークフローにAIが組み込まれていることから、ビジネスの効率性とスピードを向上させて人とAIの協働により、付加価値の高い業務にシフトできるという。
次世代CRMに関しては、従来のCRMは顧客接点のデジタル化や顧客情報の一元化で営業活動や応対業務の効率化に貢献はしたが、顧客接点のオムニチャネル化と顧客情報の取り込み・管理にフォーカスする一方で、ミドル・バックオフィスはサイロ化されてしまい、リクエストへの迅速な対応・解決には改善の余地があるとのこと。
一方、次世代CRMはミドル・バックオフィスを含むエンドツーエンドのプロセス管理・実行で優れた顧客体験を提供し、顧客サービスプロセスのオーケストレーションとアクション実行までをサポートすることに加え、シームレスな連携、優れた従業員体験でリクエストへの迅速な対応・解決を実現するものと、同社では定義している。
鈴木氏はServiceNowにおけるCRMの変遷として「約10年にわたりカスタマーサービスマネジメントやフィールドサービスマネジメントといった、CRMの主たる領域で顧客をサポートしている実績がある」と胸を張る。
同社ではセールスからフロントオフィス、ミドル・バックオフィスまでを単一のプラットフォーム上でつなぐCRMを提供しており、各フローでAIがサポート。同氏は「当社のプラットフォームが次世代のCRMとしてお客さまをサポートする」と強調していた。
Now Platform最新版「Yokohama」
続いて、ServiceNow Japan 常務執行役員 COO(Chief Operating Officer)の原智宏氏が、最新版のYokohamaについて解説した。Yokohamaはアプリケーション開発の加速、ワークフローのパフォーマンス向上、顧客体験の質の向上をガバナンスとセキュリティを担保した形で実現するという。
原氏は、Yokohamaについて「組織における最優先課題をどのように解決し、ビジネス成果を短期間で享受するのか、そのためにAIをどのように人と協働させていくのかということをYokohamaのメッセージングとしている」と説明した。
主要機能としては「AI Agent」、「AI Agent Studio」、前述のWorkflow Data Fabric、「セルフサービスポータル」の4つを挙げている。
AI Agentは人間がタスクを指示すればAI Agentオーケストレーターが計画を立案し、AI Agentを指揮して特定のユースケースに対応。AI Agentは特定のタスクを実行し、プラットフォーム上のツールを活用してタスクを遂行する。AI Agentはプリビルドのものがあり、代表的なものとしてはIT、CRM、HRなどが含まれる。
AI Agent Studioは、ユーザー自身がAI Agentを構築・変更するための開発環境となり、自然言語のプロンプトを使用してカスタムエージェントを設計。複数のエージェントがシームレスに連携し、チェーン化によりデータを共有して自動化を実現するほか、動的なワークフローで人が担当するライブエージェントとリアルタイムに連携・監視する。
Workflow Data Fabricは200以上のプリビルドのデータ統合、API管理、データストリーミングを活用して、デジタルワークフローをビジネスの多分野に拡張。プロセスマイニングがワンクリックで業務をスキャンして問題を可視化し、新たな自動化を適用することで、組織が担う業務を継続的に改善するという。
一方、AIを正しく活用するためのガードレール「NowAssist Guardian」は、攻撃性やセキュリティ、デリケートな話題といったガードレール管理、プロンプトと応答の監視・ログ取得を行うモニタリング&分析、不快な言葉遣い、敏感な話題の取り扱いを控えるエージェントの体験を向上させるというもの。管理者、開発者、エージェント、従業員と各レイヤでの透明性と説明責任を備えたヒューマンセントリックな体験を実現するとのことだ。
原氏は「今後もユースケースに紐づいた、さまざまなAIエージェントを提供していくため、注目してもらえればと思う」と述べ、説明を結んだ。