日本人間工学会のWebサイト

健康経営の実践も日本に浸透しはじめる昨今であるが、エルゴノミクスという言葉は、ギリシャ語の"ergon(仕事)"と"nomos(法則)"から成る。日本人間工学会のWebページによると人間工学の歴史は、古代エジプト、ギリシャ・ローマ時代にも記述がみられ、体系化したイタリア人医師ベルナルディーノ・ラマツィーニ氏(1633-1714)による「働く人の病(De morbis artificum diatriba)」という本では炭鉱労働者の喘息や結核とともに、不自然な作業姿勢が及ぼす影響に触れているそうだ。日本では江戸時代にあたる。20世紀に入り、様々な分野に広がりを見せる人間工学だが、先人たちの功績は偉大なものだ。

日本人間工学会のWebサイトでは、「ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン」が公開されていたので、あらためてチェックしてみた。4.1 作業に適した環境(照明,室温,騒音など)であるかを確認します。ーーガイドラインには、照明や温度、湿度、気流、騒音の快適環境における目安を掲載している。

4.1.1 快適作業環境の目安
照 度 水平面(机上)照度 300 lx 以上,
ディスプレイ(画面)照度 500 lx 以下
温 度 24~27℃(夏期),20~23℃(冬期)
湿 度 50~60%
気 流 体に当たる気流 0.1m/s 以下
騒 音 55 dB(A)以下

計測できるものを確認してみたが、鉄扉の開閉やキーボード音がスマートフォンアプリで計測すると時折55dBを超える。ヘッドフォンやイヤフォンをすることで軽減は可能だ。しかし、誰もが優れたヘッドフォンを購入できるわけでもない。また、騒音の強弱は人によって異なるし、TPO(ティーピーオーTime(時)/Place(場所)/Occasion(場面))に大きく依存する。しかし、敷居がなくなってしまった現在において、気になる人がいることも事実である。小さいに越したことはない。

無音が怖い人も最近では多いと漏れ聞くが、そんな場合はUSENのビジネスBGMが最適である。ノイズにならない適度な音楽を職場に流せるものだ。キーボード騒音問題については、じつは歴史が長い。数十年前の筆者が新人であったころから一部の人間のキーボードが延々と鳴り響く状況はある。

元来、編集のような業務は静かに紙やキーボードに向き合うもの。過失があれば、誤植や奥付のミスが賠償になる可能性も内在する行為であり、これを忘れてはならない。その意味では製造業や医療と変わらないくらいの矜持が必要である。と先輩に注意された記憶があるが、さもありなん。キーボード音に限らず度を超えたノイズはミスを増幅させるものだ。同時に関連する言葉を思い出した。

キーボードは「角度」であると。

打鍵音の激しい人は、キーボードと指が常時離れているという指摘だ。たしかに、打鍵音が大きな人は、たいてい垂直に爆弾でも落とすかのように加速をつけて叩いている。キーボードに角度をつけると自然と打鍵音が軽減されるのである。

先のガイドライン4.3(P9)には"好ましい角度にキーボードを調節し,必要に応じてパームレストを利用しよう"とある。手の長さなど個人の特徴により異なるが目安としては5~12度。"手首が不自然に曲がらずほぼ真っ直ぐになるような角度"を推奨している。人間工学的にも理にかなっているのだ。そういうわけでキーボードにリーズナブルなガジェットをアドオンした。

筆者が以前、青梅にて野生の巨大イノシシと遭遇の上で導入したキーボードは左右分割で、高低の調整を付属の首振りフット(4mm)で可能だが、角度が足りない。さらなる高さを求めて8mmフットをオンラインストアで購入したが、10度くらいの傾斜をつけられる。デフォルトの指の位置がキーに乗り、傾斜があるので指を上げずに移動できる。

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