買収提案に揺れるセブン&アイ    カナダ企業がセブンの対応に注文

新たな向上策打ち出すも セブンの株価は一進一退

「当社の提案が全ステークホルダーに明確な価値を提供するものであり、真摯かつ十分に検討いただきたいと思っている」

 カナダのコンビニ大手、アリマンタシォン・クシュタール(ACT)会長のアラン・ブシャール氏はこう語る。

 セブン&アイ・ホールディングスへ、7兆円規模の巨額買収を提案するACTがセブン側の対応に注文を付けた。

 セブンはACTの提案に対し、米国のコンビニ市場で1位と2位の両社が統合した場合、日本の独占禁止法にあたる競争法上の課題があるとし、協議の前提として、ACTに米国で地域の重なる2000店超の売却を求めている。

 しかし、ACTはセブンの対応が限定的だとして、独禁法のみに焦点を当てることに「失望している」と表明。また、ACTは「従業員の解雇や店舗の閉鎖に踏み切る考えはない」として、敵対的な買収ではないことを強調するが、セブンは「クシュタールは過去に店舗を閉鎖してきた」と否定。両社の主張は平行線のままだ。

 セブンは社長の井阪隆一氏が5月に退任し、新たな経営陣のもとで、株主価値の最大化を目指すとしている。

 主な内容は、筆頭独立社外取締役のスティーブン・デイカス氏が新社長に就任し、北米コンビニ事業会社を2026年下期までに上場させること。そして、イトーヨーカ堂などのコンビニ以外の事業を投資ファンドへ売却し、それらで得られた資金を元手に、2030年度までに総額2兆円の自社株買いを行い、株主還元に充てるというもの。

 ただ、セブンの株価は創業家によるMBO(経営陣が参加する買収)計画がとん挫して以降、2000~2200円の間で一進一退を繰り返すのみ。新たな株主価値最大化策を発表して以降も、ACTが提案する1株2700円には届いていない。

 日本企業がいつ買収提案を受けてもおかしくない時代となった今、5月27日に開催される株主総会までセブンに残された時間は少ない。

【金融国際派の独り言】長門正貢・元日本郵政社長「CEOをどう選ぶか」