NECは3月25日、エンタープライズ(民需向け)事業における市場動向や最新トピックスを紹介するイベント「NEC Media meetup」を開催した。
今回は「ロジスティクス」をテーマに、「業界・業種を超えた共同輸配送プラットフォームの推進と今後の展望」「未来の物流へつながるNEXT Logistics Japan社との取り組み」「生成AIを活用した通関DX~税番の高速特定~」の紹介が行われた。
新しいつながり方で運ぶ力を創り出す「共同輸配送」
最初に登壇したスマートILM統括部 主任 梅田陽介氏は「業界・業種を超えた共同輸配送プラットフォームの推進と今後の展望」について説明した。
梅田氏は、外部環境の変化について「2024年問題などによるドライバー不足の顕在化が加速している。2025年4月から始まる物流効率化法では、全ての事業者に積載率向上の努力義務が課される。脱炭素への取り組み要請も加え、物流網維持の難易度が増加することが考えられる」と述べた。
物流効率化法の正式名称は「流通業務の総合化及び効率化の推進に関する法律」。同法は、物流業務の一体化や輸送の合理化を実現して、労働力不足や環境問題対策など、物流業界が抱える課題の解決を目的としたもの。
このような課題を解決するために注目されているのが「共同輸配送」だ。各社バラバラの物流ネットワークを利用するのは非効率である点に着目し、共同配送(共同物流)によって輸送リソースの有効活用を実現する。
しかし、共同輸配送にも「企業の探索」や「条件調整」などさまざまな課題が存在している。そこで、NECは課題を解決する仕組みの構築を通じて、点から面の共同輸配送へ拡大していくことを狙う。
具体的には、「条件に合致する企業の探索のハードル」「条件調整や継続が困難」「オペレーションの煩雑さ」という3つの課題を解決する「共同輸配送プラットフォーム提供サービス」を提供している。
同サービスは、適切な共同輸配送の相手の自動抽出を行う「グルーピング」、共同輸配送プランの条件調整・最適化を行う「プランニング」、会社間の荷量・リソース情報を共有してオペレーションを支援する「オペレーション」を提供する。
サービスの特徴としては、探索・調整・実行までの全体の流れをデジタル化することで、人手による検討の限界を解決し可能性を広げつつ、対象ルート・候補が決定後の調整・実行をスムーズにできることがある。
さらに、同社は共同輸配送プラットフォームを活用し、業種・業界を超えて共同輸送の理解や実践に努めるためのコミュニティである「ロジスティクスシェアリングコミュニティ」を2024年に始動させた。
同コミュニティは、持続可能なロジスティクスの実現に向けて共同輸配送の実現を考えている企業同士でのディスカッションやワークショップを通じて、業務やトレンドの理解を深めるとともに、共同輸配送を実施していく可能性のある企業との新たな関係性構築を進めている。
NECとNEXT Logistics Japanの取り組み
NECとNEXT Logistics Japan(NLJ)は2024年6月に、物流の社会課題解決を目指し、ロジスティクスの全体最適に向けた戦略的な提携の検討を開始する基本合意書を締結した。
NLJは、物流の効率化・高度化を目指し、さまざまなステークホルダーを株主に持つ、新たな形の物流ソリューションの構築・提供を行っている企業。
両社共同の施策の第1弾として、NECの共同輸配送の取り組みを容易かつ効率化する「共同輸配送プラットフォーム」とNLJの物流最適化ソリューションシステム「NeLOSS」を連携した。これにより、共同輸配送における対象ルート・候補決定から配車と荷物の組み合わせを割り出す業務までシームレスなサービス提供の早期導入を目指す。
両社は「人口減少に伴い、物流網が枯渇していく課題は今後も続いていく」と予想しており、「人が少なくなっても運べる社会」への変革が必要だと考えているという。そこで、両社のサービスを連携することで、共同輸配送における対象ルート・候補の決定~荷積みの積付・割付のシームレスなサービスの提供が可能だ。
今後は高速道路を中心とした、長距離幹線輸送の自動化へ向けた社会実装、その前段として共同輸配送という市場を加速するため、「共同輸配送を当たり前とする仕組み・市場作り」を2社のミッションとして進める。
生成AIを活用した通関デジタル化ソリューション
税番とはHSコード(Harmonized System Code)に基づいて定められた、輸入商品を分類する番号で、この番号から関税率を調べられる。税番は輸出入時に国に申告のために必要となるが、実行関税率表を使って対象の税番を特定できる。
NECは生成AIを活用し、HSコードの判定を支援するツールである「AI税番判定サポート」の開発に取り組んでいる。
スマートILM統括部 主任の須賀宏平氏は、この税番に生成AIを掛け合わせる意義について「これまで税番の判定には膨大の知識が必要で工数がかかっていたが、生成AIで税番判定業務を効率化できると考えている」と説明した。
同ツールは「荷主からの税番判定依頼に最小工数で回答したい」「新人や経験が浅い人の教育ツールに使いたい」「判断に迷う/解釈が分かれる」「社内コミュニケーションロスの削減」といったユースケースで役立つという。
須賀氏はAI税番判定サポートの提供価値について、以下のように説明した。
「営業部門と通関部門の問い合わせにかかるやり取りを削減することでコスト削減につなげ『守りのDX』を進めることができます。反対に、通関部門の業務効率化によって取り扱い件数の増加に貢献することができ、『攻めのDX』も進めることができます」(須賀氏)