スカパーJSATと日本電信電話(NTT)の合弁会社である「Space Compass」が3月25日、欧州宇宙機関(ESA:European Space Agency)と、それぞれが主導する軌道上衛星間光通信ネットワークシステムの実証プログラムにおいて、相互運用の可能性について検討を進める覚書を締結したことを発表した。

Space Compassは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による「経済安全保障重要技術育成プログラム」に基づいて、2022年度より「経済安全保障重要技術育成プログラム/光通信等の衛星コンステレーション基盤技術の開発・実証」(LAIDENプロジェクト)を主導してきており、低軌道(LEO)衛星による光通信衛星コンステレーションを含むネットワークの構築に向けて情報通信研究機構(NICT)やアクセルスペース、NECの協力を受ける形で実証衛星による軌道上試験を予定しており、その試験には、Space Compassが打ち上げを予定している静止軌道(GEO)衛星との接続も含まれているという。

一方のESAは、テラビット級の容量を持つ地上ネットワークと統合された「クラウドを超えたインターネット」技術の開発と検証を可能にすることを目指した取り組みである「高速光ネットワーク(HydRON)プロジェクト」を主導している。同プロジェクトは、ARTES 4.0の戦略プログラム「コネクティビティとセキュアな通信である光および量子通信(ScyLight)」の一環として実施されており、HydRONのデモシステムは、加Kepler Communicationsと伊Thales Alenia Space Italiaがそれぞれ主導する2つの産業コンソーシアムによって構築されているという。

今回の合意は、これらHydRONプロジェクトとLAIDENプロジェクト、ならびにSpace CompassのGEO衛星を含む複数レイヤーでの軌道上光ネットワークに関連する協業の可能性を探ることを目的としたもので、具体的には、「技術的な実現可能性を議論し、相互運用性テストを実施する準備」、「両システム間の相互運用性を検証・確認するための試験計画の策定」、「共同での軌道上試験の実行」の3つに向けた検討が進められることとなる。

Space Compassでは、今回の複数レイヤー間での光ネットワークに関する協力は、同社が参画しているESAが主導する高速光通信標準化活動「ESTOL(ESA Specification for Terabit/sec Optical Links)」とともに、自社のビジョンである「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の実現を加速させるものとなると説明している。