キリンホールディングスと日立製作所は3月24日、森林由来によるカーボン・クレジットの創出に向けた共同研究契約を締結したことを発表した。

両社の強みを活かし高品質なカーボン・クレジット創出へ

世界でのGHG(温室効果ガス)総排出量が過去最高値を更新するなど環境負荷が増大を続ける現代において、大気中のGHG削減に寄与する森林の総炭素吸収量は日本国内でも減少傾向にある。その一因として、森林の高齢化による木々の成長鈍化があると考えられており、脱炭素社会への移行には、森林の炭素固定能力を最大化することが求められている。また昨今では、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のフレームワークに沿って“自社の事業が自然環境に及ぼす影響”などの情報を開示する動きが拡大しており、脱炭素と生物多様性保全の両立に取り組むことが求められている。

そうした中で注目を集める取り組みの1つに、森林由来のカーボン・クレジットが挙げられる。これはGHGの排出削減量を取引できる仕組みであるが、この分野では適切なMRV(GHG排出量・吸収量の測定・報告・検証)が行われていない「ジャンク・クレジット」の問題が指摘されており、信頼性を向上させる必要がある。またクレジット申請の手続きが複雑であることから、効率的で透明性の高い森林管理とクレジットの創出が求められているとする。加えて、適切な森林管理の1つである“苗木生産”については、生産事業者の高齢化が進行し、事業者数が1000を切る状況が続いており、従来の接ぎ木や挿し木による苗木増殖では長期間を要することから、より効率的な苗木生産技術の開発も急務とされている。

こうした背景を受け、キリンと日立は、森林由来カーボン・クレジットによる社会課題の解決に向けた共同研究を開始。キリンは、アグリバイオ事業を通じて培った「植物大量増殖技術」により、従来よりも効率的な苗木生産方法の確立を目指すといい、一方の日立は、自然計測技術やブロックチェーンなどを用いた環境配慮型プロジェクトのMRVに関するデジタル技術を活用することで、炭素固定量の定量評価手法の開発や、改変不可能なデータベースの構築、申請レポートの自動作成に取り組むという。

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