村田製作所は、生体細胞の加工や調製を行う再生医療・細胞医療などの分野向けに、金属製の細胞向けフィルタ「CELLNETTA」(セルネッタ)を世界で初めて商品化。2024年11月より国内工場で量産を開始しており、研究開発や創薬のプロセス効率化に寄与するとしている。

  • 村田製作所が開発した細胞向け分画フィルタ「CELLNETTA」(非医療機器)

培養中の細胞や微生物を液体媒質中に懸濁(浮遊・分散)させた流体である「細胞懸濁液」の中から、専門的技能や装置を使わずに、従来のフィルタよりも迅速・簡便かつ高精度に、目的細胞を分画できるようにした金属製のフィルタで、製品名は「CELLNETTA MZM1シリーズ」。

6つのメッシュサイズ(5,10,15,20,100,200µm)の製品を用意しており、再生医療技術や、細胞医薬品の研究・製造での分画(選別・回収)、濃縮、濾過などで応用することを想定。さらに農林水産や食品、エネルギー産業などバイオテクノロジーによるイノベーション創出での活用も見込む。パシフィコ横浜 ノースで開催される「第24回日本再生医療学会総会」(会期:3月20日~22日)に出展予定。

失われた体の細胞や機能を回復させる再生医療や細胞医療が世界的に注目されており、この分野の研究や製造においては、細胞懸濁液から目的細胞を分画する技術が求められる。遠心分離機のような装置を利用するか、多孔性の膜を濾材に使うメンブレンフィルタを利用する方法が一般的だが、前者は取り扱いに専門的技能を必要とし、後者は分画に時間がかかるといった課題があった。

有効な医療技術や医薬品の早期実用化のため、研究開発を効率化できる新たな手段が求められている中で、村田製作所はCELLNETTAを開発。電子部品の製造で培ってきた薄膜微細加工技術を応用し、金属薄膜にマイクロメーター・オーダーで一辺数μmの均一な微細孔を形成したもので、繊維を織り込んで作る一般的なメンブレンフィルタと比べて、厚さは10分の1~25分の1、線幅は50分の1~200分の1というサイズに抑えているため、液体が通過する際の圧力損失を軽減し、細胞懸濁液を注ぎ込むだけで目的細胞と液体媒質を短時間で分離させられるという。また、金属製のため細胞が付着しにくく、フィルタの形状も崩れにくいことから、残渣(かす)が発生することなく目的細胞を高精度に分画できるとする。

細胞懸濁液を注ぎ込むだけで、ポンプなどの装置を使わずに、目的細胞と液体媒質を短時間で効率的に分離させられるとしており、一例として目開き5µmのメンブレンフィルタとCELLNETTAで生理食塩水(PBS)50mlを通液した場合の所要時間を比較すると、メンブレンフィルタが約5分かかるのに対し、CELLNETTAは約20秒で済むとのこと。なお、メンブレンフィルタは通液で圧力をかける必要があるため、同一条件での測定とはならない。

本体サイズは50ml遠沈管に適合。生体適合性に優れた金属材料を採用し、処理による細胞への影響を最小限に抑えられるとする。衛生面にも配慮し、ガンマ線照射による滅菌処理後に個別包装して提供する。