NECは3月17日、人的資本経営に関する説明会を開催した。

説明会には、同社の執行役 Corporate EVP 兼 CHROの堀川大介氏が登壇し、ESG Dayで紹介されたNECの人的資本経営の取り組みの続編として、事業戦略との連動に対する取り組みや現状について説明した。

  • NEC 執行役 Corporate EVP 兼 CHROの堀川大介氏

    NEC 執行役 Corporate EVP 兼 CHROの堀川大介氏

Purpose経営実現に向けた取り組み

NECは、財務と非財務を明確に関連付けたPurpose経営を推進している。

「人的資本経営は、リスク低減と機会創出の双方に寄与する重要テーマです。自国の強固な実績をもとに事業機会を創出し、企業価値向上を牽引していきます」(堀川氏)

Purposeの実現に向けて、戦略・文化の両輪の取り組みが進められている。2024年度の人的資本経営の重点テーマとして、戦略においては「DX人材強化とグループ内での人材流動の実現」、文化においては「エンゲージメントスコアと相関に基づく施策の実行」を掲げ、2025中計は着実に進捗している。

これらの取り組みによって、継続的に価値創造・利益創出ができる体質へと変化しているという。堀川氏曰く「株価・企業価値ともに継続して上昇している。市場からの評価と期待が高まっているように感じる」とのこと。

  • 日経平均とNECの比較

    日経平均とNECの比較

加えて同社はPurposeの実現に向け、ジョブ型人材マネジメントを基盤としてグローバル競争力を強化している。

同社のジョブ型人材マネジメントは、「パフォーマンスを最大化できる組織の形をデザインし、それに必要なジョブをセット、ジョブに適した人材を国や組織を超えて社内外からアサインする」という方式を取っている。

これによって「事業戦略を起点とした求める人物像の明確化」「競争力とジョブの大きさに応じた報酬制度」「グループ共通のフレームワーク」を進めることで、戦略実行力を高める最適な人材ポートフォリオの実現を目指しているという。

NECの進める「ジョブ型マネジメント」

NECで、段階的に進めていた「ジョブ型マネジメント」の基盤整備を完了し、2025年4月からはグループを含む6社(約4.8万人)に対して、報酬を含めた共通基盤を展開していく。

  • NECのジョブ型人材マネジメントの進化

    NECのジョブ型人材マネジメントの進化

さらに、グループ内人材公募による主体系キャリア形成を後押しする「NEC Growth Careers」や、スキルのアップデートと行動変容の加速を進める「Re-Skilling Program」、従業員のキャリア自律や経験学習をサポートする「AIキャリア相談・コーチング」といった社内制度の活用によって、「適時適所適材」が加速している。

2024年度の実績としては、NEC従業員2.2万人の内、約5000人(新卒採用686人、キャリア採用662人を含む)が流動しているとのこと。

成長のキードライバーとしては、価値創造モデル「BluStellar」を発表しており、全社横断組織がBluStellarを強力に牽引しているという。

2024年4月に新設された「BluStellar事業推進組織」には約400人が所属、同組織を擁するデジタルプラットフォームビジネスユニットには約3万4000人が所属している。

  • BluStellarに関連する組織

    BluStellarに関連する組織

新たな報酬制度「NEC Value Shares」とは

NECは、ジョブ型人材マネジメントの考え方に基づき、個々人の期待役割に対する貢献・成果に応じてメリハリをつけた市場競争力のある報酬を実現することで、市場価値の高い優秀な人材を獲得・エンゲージ・維持し、グローバルで企業競争力を高めることを目指している。

この考え方のもと、2025年度には約7%の賃上げを行うだけでなく、戦略的ポジションには株式報酬を含む思い切った総報酬の引き上げを実施する。

大卒初任給の29万4000円への引き上げとともに、持続的な成長に向けた未来を担う約9000人の若手層への投資を強化する。加えて、約6600人のシニア層が持つ経験に裏付けられた深い専門性をより発揮できるように、定年再雇用制度においても「Pay for Performance / Pay for Job」に基づき報酬水準の引き上げを行う予定。

同日、2025年度から株式報酬制度「NEC Value Shares」を導入することが発表された。同制度は、株式交付信託を用いた業績非連動型の株式報酬として、2025年度から統括部長などの戦略ポジションを中心とした約400人の従業員を対象に導入される。

今後、NECに対して中長期的に大きな貢献が期待されるNECおよび一部のNECグループ会社の従業員6000人以上に対象範囲を拡大し、戦略的に株式報酬を付与する計画。

また、NECの持株会制度を拡大し、2026年度からNECおよび一部のグループ会社を含む約6万人の従業員を対象に、加入する従業員に従来付与していた一定率の奨励金に加えて、無償で自社株式を付与する仕組みが導入される予定。