北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は3月10日、米・マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で、“裁ち合わせパズル”と呼ばれる古典パズルの解の最適性を初めて証明したことを発表した。

同成果は、JAIST コンピューティング科学研究領域の上原隆平教授、同・鎌田斗南助教、MITのErik D.Demaine教授らの研究グループによるもの。詳細は、物理学や数学をはじめさまざまな学域のさまざまな論文が保存・公開される「arXiv」にて2024年12月5日に公開され、2025年1月27日から29日まで京都大学にて開催された「冬のLAシンポジウム」にて口頭発表が行われた。

裁ち合わせパズルとは、与えられた多角形をなるべく少ないピースに切り分けたのち、別の多角形となるように並べ替える古典的なパズルだ。中でももっとも有名とされるのが、イギリスのパズル作家であるデュードニーが1902年に発表した「デュードニーの裁ち合わせパズル」だ。これは、正三角形を4つのピースに切り分けて正方形を作るものであるが、この4ピースよりも少ない解があるのかについては、発表から120年以上にわたり未解決のままだったという。

  • 裁ち合わせパズルのイメージ

    裁ち合わせパズルのイメージ(出所:JAIST)

JAISTの上原研究室とMITのDemaine研究室は、数年前からこの未解決である難問に挑戦してきたとのこと。そして今般、JAISTの鎌田助教が新しい証明技法を考案し、「4ピースの解が最適で、3ピース以下の解が存在しない」ことを初めて証明したとする。

研究チームによると、裁ち合わせパズルは古典的な人気パズルとして数多く考案されてきたものの、どれも具体的な切り方で“存在する”ことを示すにとどまり、最適解を数学的に証明するのは難しいとされてきた。しかし今回は“裁ち合わせできない”という不可能性を数学的に証明できることが判明したとし、この証明技法は、裁ち合わせに関する新たな地平を切り開くものだとした。

また、この技法によって今後は多くの同種パズルでも不可能性を示せる可能性があるとともに、同技法をさらに精緻化すれば、今まで示されたことのない新たな裁ち合わせの発見にもつながるとのこと。加えて、裁ち合わせはパッチワークなどの工芸にも関係が深いことから、今後の多様な応用も期待できるとしている。