未曾有の被害を出した東日本大震災から今年で14年が経とうとしている。その日を境に次に訪れるであろう天災に立ち向かうため、さまざまな防災システムの開発やそれらのシステムを活用した対応訓練が行われている。

本稿では、高知県庁で行われた対応訓練において、「リアルタイム津波浸水被害予測システム」を活用された模様を紹介する。

  • 訓練の様子

    訓練の様子

人命救助のタイムリミット「72時間」の訓練

今回、高知県庁で行われた「令和6年度 災害対策本部事務局等震災対策訓練」は、南海トラフ地震が起きたことを想定した対応訓練で、地震発生から24時間後の対応をシミュレーションするというもの。

通常、救助においては初動を重要視されるため、震災発生直後の対応訓練が行われることが多いが、今回は人命救助のタイムリミットとされる「72時間」に着目した行動を訓練する目的で行われた。

それを踏まえて、同県として初めての設置となる「氏名公表班」の対応の手順の確認も行われた。

氏名公表班は、個人情報保護法が改正され災害時に家族の同意が無くても県が安否不明者の氏名を公表できるようになったことで初めて設置されたもので、職員が安否不明者の情報を収集し公表する手順の確認訓練として行われた。

  • 今回初めて設置された氏名公表班

    今回初めて設置された氏名公表班

高知県 危機管理・防災課 課長の重森哲也氏は「発災直後の初動の訓練はとても重要。一方で、発災直後は被害などの情報が少ない状況が考えられるため、地震発生から、少し時間が経過した24時間後を想定し、被害状況が一定把握できているタイミングでの対応訓練にも非常に意味がある」と語っていた。

  • 訓練の重要性を語る高知県 危機管理・防災課 課長の重森哲也氏

    訓練の重要性を語る高知県 危機管理・防災課 課長の重森哲也氏

スパコン活用のシステムで津波による浸水被害を予測する

そして今回の訓練において、特徴的だったのはRTi-castの「リアルタイム津波浸水被害予測システム」を活用しているという点だ。

リアルタイム津波浸水被害予測システムは、東北大学、大阪大学、NEC、国際航業、エイツー、RTi-castの6者が産学連携体制で開発したシステムで、地震発生直後に津波が発生した場合のシミュレーションを行い、津波による浸水被害の予測を行うことができる。

津波の発生が予想される規模の地震が発生した場合、自動で作動するようなような設定になっており、それ以外の場合も手動でシミュレーションを開始させることができる。

具体的には、予想される津波浸水域と津波浸水域と浸水域内の最大浸水深を予測する「最大浸水深」、津波の浸水が始まる時間を予測する「浸水開始時間」、代表的な地点の津波による水位変化の時系列を予測する「水位時系列」という3つの項目でシミュレーションを行うことができる。

  • リアルタイム津波浸水被害予測システム 開発体制

    リアルタイム津波浸水被害予測システム 開発体制

従来であれば津波による浸水被害の予測には1日以上かかる処理を行う必要があるが、リアルタイム津波浸水被害予測システムを活用することでその時間を大幅に削減。

南海トラフ域で発生する地震のシミュレーションでは、地震発生直後に総距離6000Kmに及ぶ太平洋沿岸地域における浸水被害の推計を地震発生から約30分以内に実施可能としている。

  • RTi-castの「リアルタイム津波浸水被害予測システム」

    RTi-castの「リアルタイム津波浸水被害予測システム」

この処理速度の向上に貢献しているのが「スーパーコンピュータ(スパコン)」の存在だ

同システムが開発される以前から防災システムにスパコンを活用することは検討されてきたが、このアイデアに対して「何十億円もかかるスパコンをいつ起こるか分からない災害のために買うことはできない」と見られていた。

この定説に対して「大学が持つ研究用スパコンを災害時だけレンタルする」という形でスパコンの活用に踏み切ったのがリアルタイム津波浸水被害予測システムだ。

システムの耐障害性向上のため、東北大学と大阪大学の2拠点でNECのスーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を使用した同一システムを構築・運用することで、24時間365日の稼働を実現している。

加えて、このリアルタイム津波浸水被害予測システムは、民間事業者としては初となる津波の予報業務許可を気象庁から受けたシステムとなっている。

高知県では2014年からリアルタイム津波浸水被害予測システムを導入し、実証という形で以下の動画のようにシステムを活用してきた。

リアルタイム津波浸水被害予測システムの活用(高知県災害対応訓練)

しかし、今回の許可の発行に伴い高知県および高知県沿岸の19市町に対して津波予報業務を開始することが叶ったという。

RTi-cast システム担当部長 佐藤佳彦氏は「津波が夜間に発生した場合、ヘリコプターも飛ばせないため被害の予測や被害の状況確認ができないという怖さがある。その時にこのシステムが頼りの綱になってほしい」と語っていた。

  • RTi-cast システム担当部長 佐藤佳彦氏

    RTi-cast システム担当部長 佐藤佳彦氏