ストックマークと産業技術総合研究所(産総研)グループ(産総研およびAIST Solutions)は3月7日、これまでの両者による共同研究で蓄積された大規模言語モデル(LLM)による自然言語処理技術をさらに発展させ、大量かつ高度な知識を熟知した人間でなければ生み出せないような新たなアイデアを発想する「自律型アイデア発想AIエージェント」に関する共同研究を開始すると発表した。
産総研では、同研究所 人工知能研究センターの石垣達也研究員、陳重吉研究員がこれまで、自動言語生成に関する研究を進めてきたとのこと。近年では、未来についてのシナリオを生成する研究や、金融分野における分析レポートの自動生成などに関する研究成果を発表するなど、AIから発想を得る技術の知見を蓄積してきたという。また産総研は2023年4月、国内のイノベーション・エコシステムを実践していく会社としてAIST Solutionsを立ち上げ、同研究所グループとしてのミッション達成に貢献すると期待されるスタートアップ企業を「AISolスタートアップ」と認定して事業共創を推進するなど、オープンイノベーションに向けたの取り組みを進めてきたとする。
一方のストックマークは、7年間にわたって独自に収集したビジネスデータ基盤や、独自のLLM開発を用いた生成AI基盤、多くの導入実績を誇るプロダクト基盤を軸に、ビジネス領域における生成AIの社会実装を支援することで、さまざまな顧客の業務変革を支援してきたという。そして2024年5月には、AIST SolutionsからAISolスタートアップとして認定されたことを発表している。
そんな両者は今般、高い厳密性が問われるビジネスシーンで活用可能な、アイデアを発想するLLMベースの自律型AIエージェントに関する共同研究を開始。膨大で複雑な情報があふれるビジネス現場において、“自社技術の新たな用途を模索提案する用途探索”や“営業活動における提案資料作成”など、さまざまなシーンにおけるビジネスプランの策定について、高い実現性を持つアイデアを生み出すAIエージェントを目指すという。
なおこの共同研究においては、「強制発想法」「ナレッジグラフ技術」「蓄積された用途探索実績」の3つのポイントに注力して開発を行うとのこと。強制発想法は、自社技術(シーズ)やアウトプットとなる社会課題(ニーズ)を理解した環境下で発想を促すもので、同手法により起点と終点を定めることで、自律型AIエージェントによる思考や発想が散漫になることを防ぎ、要点を捉えたビジネスプランの策定を可能にするとした。また、言葉の意味を理解する上に言葉同士のつながりも理解するナレッジグラフの構築技術については、ストックマークが強みを有しているといい、これにより自社技術の特徴や固有の表現、業界の専門知識などの複雑な社内外情報を正しく理解して、AIエージェントによる発想の精度や実現性を向上させるとしている。また同社は、長年蓄積した良質かつ豊富なビジネスデータや、独自開発のLLMを駆使し、新規用途探索を目的とした企業との実証実験を行ってきた実績を豊富に有していることから、それらの技術やノウハウを活用することで、ビジネス現場での業務定着も視野に入れたAIエージェントを実現するとのことだ。
両者はこの研究で、決まったルールや枠にとらわれずに発想を行う「自由発想」ではなく、実現性の高い発想を行うAIエージェントの開発を目指すといい、これまでに開発された技術を基盤としつつ、最新の自律型AIエージェント技術と融合させることで、更なる技術発展を実現するとともに、ストックマークが蓄積したノウハウを駆使することで迅速な社会実装を行うとしている。