アルプスアルパインは3月7日、東京大学(東大)大学院理学系研究科物理学専攻の中辻知教授の研究グループと、トポロジカル磁性体の巨視的量子効果を用いた小型かつ高い磁気分解能をもつ磁気センサの開発に向け、2025年2月に社会連携講座を設置する形で共同研究を開始したことを発表した。
同社は現在、センサ・コミュニケーション事業を成長ドライバーとして位置付けており、2025年4月より開始する第3次中期経営計画の中においてもセンサ領域への戦略投資を計画しているという。
中でも磁気センサは車載、スマートフォン、産業ロボット、医療機器など多岐にわたるところで使用されており、今後も成長が期待されている。
そうした磁気センサは、微弱な磁場の変化をとらえる高分解の測定が可能で、同社の現行品では800pT程度の磁気分解能を有している。今回の共同研究は、物質の内部や表面において、通常の物質とは異なる特別な量子的性質を持つ材料である「トポロジカル材料」、中でも巨大なホール効果など巨視的な量子効果が現れる事が知られる磁性体材料「トポロジカル磁性体」、特に東大の研究グループが研究しているものを用いることで、現行品比で1000倍以上の高分解能化が期待される見込みだという。
そのため、これまで検出できなかった小さな磁場の測定も可能となり、潜在的な不良検知や病気の早期発見など、産機・医療市場に対する新しい事業創出の実現につながることが期待できるという。また、量子コンピューティングなど、磁気センサ以外のスピントロニクスデバイスへの応用にも期待ができるなど、実用化に伴う新規市場創出にも期待できるとしている。
なお、同講座の活動期間は2024年11月から2029年10月末までの5年間で、講座名は「トポロジカル量子センシング」。研究目的は、「常温で小型な世界最高レベルの分解能をもつ量子センシングを研究」としており、その内容としては「センサに応用可能なトポロジカル材料とセンシング機構の研究」としている。