第一生命ホールディングスは3月4日、同社が主催するフィンテックイベントである「ほけんの未来:テクノロジーと女性の力」を開催した。
同イベントは金融庁の「Japan Fintech Week 2025」の認可イベントで、多様性とイノベーションをテーマに、女性とテクノロジーが保険業界の未来をどのように創造していくかを考察するセッションが行われた。
イベント内で開催された「イノベーションの力、牽引する第一生命AIエージェント開発」というセッションでは、AIエージェントの開発リーダーが、同社のデジタルアシスタント「ICHI」とAIアバター「Sophie」について語った。
同セッションには、第一生命保険 DX推進部 部長の市川陽一氏、第一生命保険 DX推進部 イノベーションラボの増田淑乃氏、長澤彩夏氏の3人が登壇した。
デジタルアシスタント「ICHI」の概要
デジタルアシスタント「ICHI」は、「お客さまの日常にそっと寄り添う気軽なパートナー」をコンセプトに開発されたチャットサービスだ。
ゆるく雑談しながら自然と将来のことや、必要な備えを考えるきっかけが得られるチャットサービス「ICHI to Chat」として開発されており、保険になじみのない人や、興味はあるが対面でのアプローチにプレッシャーを感じる人などに、ライフプランについて考えるきっかけを届けるサービスとして活用されている。
顧客は、スマートフォン1台でいつでもどこでも「ICHI」を利用できるのに加え、保険に限らず身近で有益な情報を獲得することができる。
ICHIの開発のリーダーを務めている長澤氏は「相手が人間ではないからこそ話しやすく、何でも聞きやすいという利点がある」と、ICHIの特徴を語っていた。
同社では、ヒト(生涯設計デザイナー)とデジタルアシスタントとの協働による、新たな顧客体験の実現を目指しており、ICHIを通じて「CX(カスタマーエクスペリエンス)向上」「顧客獲得・ナーチャリング」「デジタル接点のリアル接点化」を推進したい考え。
Digital Buddyの「Sophie」の概要
一方のDigital Buddyの「Sophie」は、「生涯設計デザイナーの頼れる相棒」として活躍する伴走支援型のAIアバターだ。
「Sophie」は顧客データ・活動情報の蓄積による「お客さま理解」と、活動ガイダンスと手続きサポートを通じた「営業生産性向上」をミッションとしており、具体的には会話記録・議事録作成や活動レコメンド、照会対応などを行ってくれる。
特徴としては、3Dグラフィックスによって擬人化された相棒としての安心感と、「Azure AI Service 音声サービス」「Azure AI Search」「Azure OpenAI GPT-4o」など最新技術を常に着脱・最新化できる知能を有していることが挙げられる。
「Sophie」は、慢性的な業務過多による生涯設計デザイナーの精神的・業務的負担に課題を感じていたことを背景に開発・導入されたもの。
「Digital BuddyであるSophieの導入により『顧客理解』や『事務作業の効率化』、『営業活動の最適化』が促進され、生涯設計デザイナーの精神的・業務的負担が改善されたという結果が出ています」(増田氏)
今後は「高度な照会対応スキル」と「助言・提案スキル」が拡張される予定とのこと。
「AI×アバター」の今後の挑戦
同社は今後、「AI×アバター」の活用により、これまで暗黙知化されていた、生のコミュニケーションデータをもとに、CXとEX(エンプロイー・エクスペリエンス)の向上を目指す。
営業サイドはAIエージェントの活用で「顧客理解の向上」「顧客に寄り添った最適な提案」「営業事務の効率化」を進め、顧客には「納得感のある保険加入」「いつでもどこでも相談可能」「手厚いフォローによる安心感/信頼感醸成」という付加価値を提供する。
また指導者にとっても「育成や指導の高度化」、本社にとっても「優績者の活動分析」「顧客特性分析」を進めることができるというメリットがあるという。
最後に長澤氏は今後の展望について、以下のように述べた。
「AIエージェントを提供する際、いかにお客さまの生活に溶け込めるか、いかに使用してもらえるか、ということが重要になってきます。ICHIとSophieの両方で情報交換を進め、よりお客さまに利用していただけるサービスに成長していけたらと考えております」(長澤氏)