毎年春の風物詩となっている桜。ウェザーニューズによると、今年は開花してから厳しい寒の戻りがあったため、見頃の期間が「長持ち」しているという。
風に舞う花吹雪を見るたびに「日本に生まれて良かった」と思うほど、桜が好きな筆者だが、桜と同じくらいお花見も大好きだ。お酒を片手に仲間と集まって、風物詩を楽しむ情景こそ、日本で愛されるお花見の姿だろう。
本稿では、そんな日本で愛されているお花見を守るべく、AIの力を使って桜の保全活動を行うプロジェクトを進めている「キリンビール 晴れ風」が行っている、「晴れ風ACTION 桜AIカメラ」を紹介する。キリンビール マーケティング部 新価値創造担当の塩田梨沙氏に話を聞いた。
「晴れ風ACTION」とは
「キリンビール 晴れ風」は、2024年に販売開始した、同社が17年ぶりにスタンダードビールとして開発した新ブランド。麦芽100%の麦のうまみと、国産希少ホップIBUKIの爽やかな香りが感じられる、飲みやすくきれいな味わいが特徴のビールとなっている。
4月15日には、飲食店向けに「キリンビール 晴れ風」の中びん(500ml)、次世代ビールサーバー「TAPPY(タッピー)」の3Lペットボトルを販売開始するなど、ビールとしての人気も好調な晴れ風だが、同商品の特徴を語る上で外せないポイントとして「晴れ風ACTION」という取り組みがある。
キリンビールが取り組みを進めている「晴れ風ACTION」は、ビールを飲むよろこびを広げてくれた「日本の風物詩」を守り、そこに集まる人々の笑顔を未来につなげていきたいという思いから、晴れ風の売上の一部を日本の風物詩の保全・継承に関わる取り組みに活用するプロジェクト。
同プロジェクトにおいて、昨年までは寄付金を用いて、桜の保全活動や花火大会の支援活動を実施。合計94の自治体を対象に2つの保全活動を実施し、それぞれの目標金額の4,000万円を達成。寄付総額は年間で約1億855万円、参加人数はのべ約1億9234万人を記録しているという。
「皆さんがビールを楽しめる日本の風物詩を救うために『晴れ風ACTION』は実施されています。特に桜においては、戦後の復興期に植えられた多くの木が樹齢60〜70年を迎え、高齢化が進んでいます。そして高齢化した桜は、植え替えや剪定、害虫駆除などの保全が必要な場合もあるのです」(塩田氏)
桜の元気度を判定する「桜AIカメラ」
2025年に入って、新たな取り組みとして3月17日にローンチされたのが「桜AIカメラ」だ。
桜AIカメラは、独自のAI技術を活用し、スマートフォンで撮影した桜の写真から、桜の健康状態である元気度や樹齢が判定できるカメラで、まるで人間の健康診断のように、桜の状態をチェックできるのが特徴。
樹木医の協力の元で収集された約5000件の学習データを活用し、桜の樹形や樹勢、幹の太さや模様といった特徴データと診断結果をディープラーニングさせることで、「桜の元気度や樹齢を判定することができるAI」として開発された。
ここで撮影された写真やデータは、全国の自治体に共有され、桜保全データベースとして活用される。
集まったデータを元に、桜の健康状態が悪化しているエリアを特定し、自治体や樹木医が適切なメンテナンスを行えるようになったり、桜の樹齢を把握することで、計画的な植え替えや保全活動を進めることができるようになったりするという。
なお、この桜AIカメラは、桜の花が咲いている春だけに限らず、通年で利用することが可能。葉がつく夏や紅葉の秋、枝だけの冬も含め、年間を通じて桜を撮影してもらうことで、桜の保全に必要なデータをより精度高く収集可能になるという。
「見るお花見」から「守るお花見」へ
塩田氏は、晴れ風ACTIONを通して桜の保全活動を進める中で、自治体や樹木医から「桜を守る第一歩はまず桜の状況を知ることだが、桜のデータが不足している」という課題を聞く機会が多くあったそう。
データが不足している背景には、桜の状況把握には膨大な予算が必要で、各自治体が独自で調査を行うにも限界があることがあるという。
そこで、多くの人が桜の季節になるとスマートフォンで桜を撮影していることに着目。お花見客を含む一般のユーザーが撮影した写真が、桜の状態を把握することにつなげられないかという発想から、生活者参加型の桜保全データベースとなる「桜AIカメラ」を開発するに至ったという。
「『桜AIカメラ』により、これまでの『見るお花見』から『守るお花見』へと意識を変えていくことができるのではないかと期待しています。お花見に参加した時にいつも撮っている桜の写真をそのまま提供いただくことで、誰でも簡単に桜の保全活動に参加できます。まずは、桜の置かれている現状を知って、意識を変えていくような取り組みになれれば良いなと思います」(塩田氏)