マグナ・ワイヤレス、大阪大学大学院工学研究科(阪大)、情報通信研究機構(NICT)の3者は、超低遅延通信を追求した「ポスト5G対応半導体チップ」を世界で初めて開発したと3月4日に共同発表。スマート工場や物流、医療など、産業分野におけるローカル5Gの普及拡大と、産業DXの加速が期待されるという。
ポスト5Gチップは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、3社共同で開発したもの。マグナ・ワイヤレスが2025年度中に製品化する計画だ。
最大の特徴は、チップ内の無線信号処理を専用ロジック回路とすることで、5G無線通信の処理時間(遅延時間)を従来の約10ミリ秒以上から0.2ミリ秒以下へと50分の1に短縮できること。これにより、超低遅延が要求される制御信号などにも無線通信の適用が可能になるとしており、具体例として「人工知能(AI)サーバーからローカル5G無線通信を介して、ロボットをリアルタイム制御すること」を挙げている。
同チップはソフトウェア無線(SDR:Software Defined Radio)に対応し、遅延または帯域優先、上り/下り通信の比率、無線変調方式といったさまざまな通信設定も可能。信号処理部とプロトコル処理部を分離し、SDR機能を活用することで、ワンチップで複数かつ多種のネットワークスライシングにも対応する。複数ベンダーの基地局との相互接続性も確認しており、汎用的に各種無線システムに適用できるという。
ローカル5Gの通信性能向上を目的とし、3者は2つの新しい無線通信方式も開発し提案。ひとつは、同一の無線リソース(周波数および時間)を共用するNOMA方式により、2台のユーザー端末(UE)の同時接続を実現する「低遅延/多元接続5Gアサイン方式」。もうひとつは、画像を含む多用途な無線システムにおいて、高品質な画像伝送と高効率な通信を提供する「端末スライシング向け画像伝送方式(Deep JSCC)」。これらの新方式は、ポスト5GチップのSDR機能を用いて実装することで、システム構築が可能としている。