NECは3月3日、仮想化基地局(vRAN)向けのソフトウェアを開発し、商用化したことを発表した。今後、国内外の通信事業者向けに提供し、2026年度までに5万局以上の展開を目指す構え。
vRANの概要
vRANは、5Gサービスの高機能化、運用コストの最適化/効率化、柔軟なネットワーク設計、エリア展開の加速、IOWN構想との連携などネットワーク技術すべての開発基盤となるシステム。
これにより、消費電力の削減やOpen RANによる新技術の開発/導入が容易になり、イノベーションの促進につながるという。
NECのvRANは、5Gをはじめとするオープンかつ拡張可能な次世代の無線アクセスネットワーク実現を目指し、標準化を推進する国際的な業界団体であるO-RAN ALLIANCEが定める仕様に準拠したキャリアグレードのネットワーク品質を実現する。
また、オープンインタフェース仕様に準拠しているため、異なるベンダーの装置やクラウド環境と連携して動作することを保証しているという。
同ソフトウェアを使用することにより、通信事業者が要求する仕様に対して最適なRAN構成を実現することに加え、コンテナ化されたアーキテクチャを採用。クラウドネイティブかつ大規模な商用利用実績のある5Gハードウェア基地局の技術や知見をベースに開発しており、最先端の汎用サーバに対応している。
さらに、処理を高速化するクアルコム テクノロジーのインライン型アクセラレータ「Qualcomm Dragonwing X100」を活用することで、5Gの特徴である高速、大容量通信を実現している。
トータルでクラウドネイティブな5Gネットワークの構築が可能に
NECはすでに仮想化技術を適用した5Gコアネットワークを市場に展開しており、今回のvRAN向けのソフトウェアの商用化によりコアからRANまでトータルでクラウドネイティブな5Gネットワークの構築が可能となる。これにより、多様なサービス要求に柔軟に対応可能な、高品質な5Gネットワークの提供を実現する。
また、同ソフトウェアを活用することで、仮想化によるリソース再配置が可能になり、NECの専用ハードウェア5G基地局装置使用時と比較して、最大約65%の装置トータル消費電力削減を実現している。
加えて、NECはvRANの高機能化を実現するNear-RT RIC(Near Real-time RAN Intelligent Controller)を開発しており、多様化するサービス要求に応じてRANの動作を動的にカスタマイズし、品質改善やSLA保証、省電力などの機能拡張が可能。
さらに、同ソフトウェアをNECの持つネットワークの運用および管理を高度化するソリューションと組み合わせることで、モバイルインフラ全体の構築工数を従来比で約70%短縮し、短期間で5Gネットワークの大規模な商用展開が可能となる。
NECは、今後も5G Advancedや6Gを見据えた5Gネットワークの高機能化や、多様化するサービス要求に対応する高い拡張性・柔軟性を備えたネットワークの提供に向けて取り組みを進めていきたい構え。