パナソニック くらしアプライアンスは3月3日、日本大学工学部電気電子工学科 准教授の村山嘉延氏と共同で、小型ウェアラブルデバイスを活用して、就寝中に腹部周辺の衣服内温度を計測することで、女性特有の月経リズムに伴う二相性が把握できることを実証したことを発表した。村山氏は生殖医療領域における生体データ解析の専門家で、かつ腹部の衣服内温度に関する研究を行っている。

発表会では、パナソニック くらしアプライアンス ビューティ・パーソナルケア事業部 ビジネスデザイン部 図師和彦氏、日本大学工学部電気電子工学科 准教授の村山嘉延氏が検証の詳細を発表した。

  • 実証に使用された小型ウェアラブルデバイス

    実証に使用された小型ウェアラブルデバイス

パナソニックが「フェムテック」に参入する狙い

図師氏が所属しているビューティ・パーソナルケア事業部は、美容・健康分野でヘアケア製品やボディケア製品といった多数の商品カテゴリーを展開している。

同事業部では「内健外美」の考えのもと、バイタルデータに基づくビューティー・パーソナルケアを行う新習慣の提案を推進している。

同社は、顧客自身の生体データが科学的に見える化されることで、顧客の意識や行動を変えるきっかけを提供できるのに加え、そのきっかけから、顧客自身の適切な行動の習慣化を促していくことができる、と考えているという。

その中で、同社が着目したのが「フェムテック」だ。

フェムテックとは、FemaleとTechnologyをかけ合わせた造語言葉で、女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスなどを指す。月経や不妊治療、出産、育児、子育て、婦人科系疾患など幅広いジャンルで活用されている。

政府においても女性活躍推進や少子化対策などの社会的課題への政策も後押しになり、政府主導で女性の健康課題解決およびフェムテックの推進も進められている。

「女性は、思春期・成熟期・更年期・老年期と、男性とは異なる心身の変化に直面すると言われています。その理由の一つは性ホルモンの動きであり、女性は各ライフステージにおいて女性ホルモン起因のさまざまな悩みを抱えていると言えます」(図師氏)

  • パナソニック くらしアプライアンス ビューティ・パーソナルケア事業部 ビジネスデザイン部 図師和彦氏

    パナソニック くらしアプライアンス ビューティ・パーソナルケア事業部 ビジネスデザイン部 図師和彦氏

今回フェムテック事業に乗り出すことを発表したパナソニックは、月経リズム把握の習慣化をサポートすることを目的に、就寝中の衣服内温度に着目してウェアラブルデバイスの原理モデルを開発した。

小型ウェアラブルデバイスで睡眠中の体温を測定

今回行われた検証は、自然な月経周期(25~38日)の女性44人を対象に、パナソニック くらしアプライアンスが開発した小型ウェアラブルデバイスをおへそのあたりで下着と皮膚の間にクリップで装着することで、睡眠中の衣服内温度を3カ月間計測してもらうというもの。

「今回の検証では、小型ウェアラブルデバイスを活用して、衣服と皮膚の間の温度を測定しました。被験者からは『装着感や圧迫感を感じにくい』『データが自動保存されるのでストレスが少ない』『下腹部を見守ってくれるパートナー的な存在になった』という声が聞かれ、質の高い研究データの収集につながりました」(村山氏)

  • 日本大学工学部電気電子工学科 准教授の村山嘉延氏

    日本大学工学部電気電子工学科 准教授の村山嘉延氏

ウェアラブルデバイスの検証のほかに「基礎体温(舌下温)」「LH検査(排卵日予測検査)」の2種類の計測も行われた。これら3つの計測から、月経リズムと衣服内温度の関連について「衣服内温度で月経リズムに連動する低温期、高温期の二相性パターンを観察」「衣服内温度と基礎体温との間で高温期移行日に差がないことを確認」という検証結果を得たという。

  • 検証方法

    検証方法

両者は今回の検証を通じて、「月経リズムの把握の習慣化」に期待を寄せており、女性が自身の月経リズムを知ることで、体調の変化と上手に付き合うことができ、毎日をより健やかに過ごせる社会を目指す。

今後、パナソニックは、今回の検証結果を生かした製品開発に加え、女性の生活習慣ならびにQOL向上を目的に、月経を中心に、女性にとって重要な心身のバロメーターのさらなる研究、その結果を生かした製品ならびにサービス開発を進めていく方針。