The San Francisco Standardは2月27日(米国時間)、「Marc Benioff says Salesforce will hire no engineers this year」において、SalesforceがAIを理由に今年は技術者を採用しないと伝えた。
AIが仕事を奪い始める
The San Francisco Standardによると、Salesforceの最高経営責任者(CEO: Chief Executive Officer)を務めるMarc Benioff氏は、2月26日の決算発表の場で今年は技術者を採用する予定はないと述べたとのこと。
Benioff氏は、その理由として、同社が開発、運用している自立型AIエージェント「Agentforce」の成功を挙げ、さらに次のように発言したという。
今、CEOたちに伝えたいことは、我々は人間だけで管理する最後の世代だということだ。
AIエージェントはChatGPTのようなチャットボットと異なり、指示されたタスクを達成するために自律した活動が可能とされ、人間による継続した監視を必要としない。会議の設定や交渉業務、コードの実装も可能とされる。
ホワイトカラー不況の予想
Benioff氏は、発表の中で「Fortune 100(総収入に基づく全米上位100社)」の約半数が同社のAIエージェントおよびデータクラウドを使用していると述べ、すでに広く利用が始まっていることを明らかにした。また、直近の高い導入実績を示し、Agentforceを誇らしげに宣伝したようだ。
しかしながら、決算の実態はBenioff氏の発言と食い違っており、売上高と1株当たりの利益が市場の予想を下回ったとされる。その影響を受けてか、株価は一時急落している。また、Salesforceは2023年に7,000人、昨年は1,000人以上の人員整理を行っている。
そのため、AIエージェントが仕事を奪ったのではなく、業績悪化により採用を凍結したのではないかとの見方もある。しかしながら、Salesforceの上級業界アナリストのVernon Keenan氏は、ビックテックでみられる初級職の衰退が原因と述べ、この見方を否定した。
同氏は2月28日、「The White-Collar Recession of 2025: AI and the Great Professional Displacement - SalesforceDevops.net」において、AIを要因とする採用凍結の詳細を伝えている。
通常、採用凍結は業績悪化を原因とするが、現在ビックテックを中心に実施されている採用凍結は雇用環境の劇的な変化、つまりAIが原因と指摘している。これまでは「静かな侵食」だったが、すでに静かではなくなり、前例のない速度で仕事が置き換えられている事実を解説している。同氏は最後に次のように述べている。
AI主導の効率化が人間の労働需要を劇的に上回る世界では、雇用の概念全体を考え直す必要があるかもしれない。ホワイトカラー不況が到来し、その影響はまだ始まったばかりだ。
AIがもたらすメリットとデメリットが実社会に影響を与え始めている。個人の努力で対処できる段階はすでに過ぎており、政府や企業には戦略を速やかに策定することが望まれている。