Box Japanは2月26日、新年度の事業戦略に関する記者説明会を開催した。説明会には2月1日付で社長執行役員に就任した佐藤範之氏が初めてメディアの前に登場し、事業戦略を紹介した。

加えて、米Box 最高執行責任者(COO)のオリビア・ノッテボーン氏がグローバルの市場概況について、また、Box Japan社長から代表取締役会長に就任した古市克典氏が今後について語った。

AIでもリーダーのポジション確立を

冒頭、ノッテボーン氏は「第2章を迎えて楽しみ。テクノロジーの観点から、今はエキサイティングな時期にある。AIを介してインテリジェンスを活用でき、AIエージェントが台頭している。非構造化データを構造化データに変換することが可能になった」と語った。

  • 米Box 最高執行責任者(COO)オリビア・ノッテボーン氏

ノッテボーン氏はデータ活用の機会を考える際、非構造化データの爆発的な増加が重要だと指摘した。企業の90%は非構造化データと言われていることから、これらを活用できれば、ビジネスにインパクトを与えられる。

現在、非構造化データを活用できる時代になったが、「問題がある」とノッテボーン氏は述べた。なぜなら、企業が利用しているデータが散在しているからだ。データが集約されていないと、メンテナンスのコストもかかり、セキュリティの担保も難しい。

そこで、同社は現在「System of intelligence」として、ワークフローの自動化とデータにまつわるインテリジェンスの提供を目指している。

  • Boxのビジネスの変遷。現在は、ワークフローの自動化とデータにまつわるインテリジェンスを提供する

ノッテボーン氏は同社が企業における非構造化データのためのプラットフォームを提供しているとして、その独自性について、次のように説明した。

「当社のプラットフォームはシームレスであり、1500を超えるソフトと連携している。Boxを採用することで、新たなユースケースの創造につながる」

ノッテボーン氏は今年度の目標として、コンテンツに加え、AIについてもリーダーのポジションを確立することを挙げた。

代表取締役会長としての古市氏のミッションは?

古市氏は日本法人が設立された2013年8月に代表取締役社長に就任、10年以上にわたり、Boxの国内における普及に取り組んできた。

  • Box Japan 代表取締役会長 古市克典氏

古市氏は、「Box Japanは米国本社とも特別な関係にある点で、他の外資と違うのではないかと思う」と述べ、経営層がAirbnbで合宿を行い、CEOのアーロン・レヴィ氏と同室で過ごしたというエピソードを披露した。

今後、古市氏はもっと日本企業の幹部との関係性を深めるために、エグゼクティブリレーションに取り組み、新しいチームが早く立ち上がることを支援するという。

さらに、古市氏は「具体的なことは言えないが」と前置きしたうえで、Box Japanが新しいプロジェクトに取り組んでおり、それにも関わることを明かした。

FY2025のハイライトとFY2026の事業戦略

佐藤氏からは、前年度(FY2025)の業績と今年度(FY2026)の戦略に関する説明が行われた。

  • Box Japan 佐藤範之氏

FY2025のハイライト

前年度の業績のハイライトとしては、「ライセンス、コンサルティングともに売上好調」「高水準の更新比率」「イノベーションの加速」が紹介された。

  • Box JapanのFY2025のハイライト

為替の状況はよくないが、グローバルに占める日本の売り上げ比率は年々伸びており、直近の四半期は24.0%に達する見込みだという。また、当初は大手企業にフォーカスしていたが、ミッドマーケットとSMBの売上が上昇しているとのことだ。

佐藤氏はコンサルティングビジネスについても言及した。同社のコンサルティングはライセンスを購入した企業に対するインプリテーションの支援に加え コンテンツ管理、Tobeのありかた、導入前のコンサルティング、セキュリティリスクまでカバーしており、圧倒的に高い数字を達成したという。

更新比率が高い理由の一つとして、佐藤氏はコストを挙げた。Boxの有料プランはストレージ容量を無制限としているが、クラウドストレージはプランごとにストレージ要領の制限が決まっていることが多く、Boxの強みといえる。

また、イノベーションとしては、Box AIの機能拡充が紹介された。今年1月には、AI機能を搭載したEnterprise Advanced プランの提供を開始した。同プランでは、Azure OpenAI、AWS Bedrock、AnthropicのClaude、Google CloudのVertex AIといったLLMを活用し、企業独自の要件に合わせたカスタムAIエージェントの作成、テスト、展開を可能にするBox AI Studioが利用できる。

佐藤氏は「Boxはコネクタを持っているのでさまざまなコンテンツが入ってくる。こうしてBoxに集まったコンテンツに対し、各種LLMのクエリを無制限で利用できる」と、AIにも同社のプライシングに対する姿勢が表れていると述べた。

  • Boxのプラットフォームとしての主要機能

FY2026の事業戦略

佐藤氏は、製品、市場、社内の3つの観点から、FY2026の事業戦略について説明した。

製品としては、インテリジェントコンテンツ管理基盤を提供し、AIの民主化と市民開発の加速を支援する。具体的には、AIを活用して、「インサイトを即座に提供」「ワークフローの自動化」「すべてのデータの保護」の実現を目指す。

BoxでAIの活用を促進するプランとしては、前述のEnterprise Advancedプランが提供されている。また、AIの民主化の例として、2月20日より、すべてのエディションで「Box AI for Documents」「Box AI for Notes」が利用可能になったことが紹介された。

市場については、これまで同様、金融、公共、地方に注力し、6つのセグメントごとに営業組織を強化する。

社内の改革としては、これまでの古市氏と佐藤氏の2名のVP体制から、営業とCSのエグゼクティブを加えた4VP体制に変更する。その背景には、「当社も従業員が240名まで増えており、セクショナリズムや官僚化組織との闘いに直面しつつある」(佐藤氏)ことがあるという。

そこで、社員のエンパワーメントを高めるために、組織を変更することで、意思決定のスピードを上げたいという。佐藤氏は「実行力にこだわった組織にしたい」と語っていた。