Box Japanは4月17日、事業戦略に関する記者説明会を実施した。説明会には、Boxの最高製品責任者であるディエゴ・デュガキン氏が登壇し、2025年度の製品戦略とロードマップの説明に加え、Box Japan 代表取締役社長の古市克典氏から2024年度の振り返りと日本の事業戦略について、専務執行役員の佐藤範之氏から直近の導入事例についても語られた。
AI技術で第3章の幕開け
最初に登壇したデュガキン氏は、組織が直面する喫緊のデジタル課題として「業務のデジタル化と自動化」「AIの導入で企業のスピードを高める」「最重要データの保護」という3点が挙げられることに言及した。
「この3点は、組織の方々が直面しているデジタル課題です。私たちは、これらの課題をワークフローの戦略の観点からまとめることが重要であると考えています。また、ビジネスの世界でもますますデジタルによる自動化が進んでいく中で、いかに安全で安心な環境で仕事を進めることができるのか、という点は外せません」(デュガキン氏)
その中でBoxが開発したのが、ワークフローの自動化とインテリジェンスを兼ね備えたコンテンツクラウドだ。デュガキン氏が「世界で最も先進的」と自称するこのコンテンツクラウドは、「最新のワークフローとコラボレーションエクスペリエンス」「高度なデータ保護とコンプライアンス」「エンタープライズグレードのAI」「柔軟性と相互性に優れたプラットフォーム」といった特徴を持ち合わせている。
「Boxは創業時、ファイル共有とストレージを中心としたサービスから始まり、第2章ではコンテンツの管理と安全確保に取り組むことで、外部とのコラボレーションや電子サインのワークフローを支援してきました。現在は、AI技術を活用することで、ワークフローの自動化とコンテンツインテリジェンスに注力しています。これはBoxにとって第3章の幕開けであり、世界で最も先進的なコンテンツクラウドの開発を進めていく構えです」(デュガキン氏)
Boxの2024年度を振り返る
続いて登壇した古市氏は、Box Japanの2024年度(Boxの2024年度は2023年2月1日~2024年1月31日を指す)のビジネスハイライトと2025年度の事業戦略の注力分野を説明した。
まず古市氏は、2024年度のビジネスハイライトとして、「日本は全世界売上高の21%」「高水準のアップセルと急成長の最上位プラン」「Box Consulting サービス内容の拡大」の3点を挙げた。
日本における売上を公表していないBoxは、疑似売上高として年度末のTotal Account Value(年間契約金額)を発表している。それによると、世界全体では売り上げ10億ドル超を達成し、営業利益率は25%を超える結果となったという。
その中でも特徴的なのは、「日本の占める割合が21%に増加している」という点だ。2020年度の段階では、日本の占める割合が10%だったのと比べると4年間で倍以上の成果となっていることが分かる。
「この21%という数字の意味するところは、Boxにおける日本のお客さまの存在がとても大きいということです。日本の顧客が何を欲しているのか、何を求めているのか、という点に対して弊社はいつも敏感に考えています」(古市氏)
このように好調なTotal Account Valueを発表しているBoxだが、年間新規受注高のうち7~8割が「アップセル」となっているのも特徴的だ。このアップセルの中でも、最上位プランである「Enterprise Plus」は新規受注が急増している。
「アップセルとは、お客さまが購入した商品と同種で『より上位のもの』を提案し購入してもらうことを指します。この結果から、購入していただいたお客さまに弊社のサービスを気に入っていただき、満足していただいているという点がお伝えできるのではないかと思います」(古市氏)
またこれらに加えて、古市氏は「Box Consulting」の受注高が急成長しているという点も売り上げの好調理由の大きい要因になっていると考えているという。同サービスは2021年度以降、急激に成長しており、古市氏は「導入支援に加えて、受注前の活用ケース開拓や文書管理コンサル、受注後の長期支援が伸長した」とサービス内容の拡大が上手く機能していることを説明した。
2025年度の3つの注力分野
2024年度の振り返りに続いて古市氏は、2025年度の注力分野として「製品」「市場」「組織」の3点を挙げた。特に製品分野では、インテリジェンスの加速を通して「Box AI 元年」を目指す構えだ。
「現在、提供している単一ドキュメント用の『Box AI for Document/Note』に加え、新たに提供する複数ドキュメントに対応した『Box AI in Hubs』を活用し、お客さまに必要な情報だけを抽出した企業独自の『AI活用ポートフォリオ』構築を目指します」(古市氏)
また市場については、大企業・中堅企業・中小企業・地方企業・金融・公共という6つのセグメントごとの独自課題に対応していく方針。
加えて「日本社会の成長なくしてBoxの成長なし」という考えのもと、2025年大阪・関西万博の運営参加サプライヤーとしての参画や能登半島地震に対する災害支援プログラムの無償提供など、社会貢献活動にも注力していくとしている。
3点目の組織については、「シリコンバレー企業」と「日本企業」というBoxの持つ2つの面のいいとこ取りを追求していくという。
「シリコンバレー企業の『迅速な意思決定』『フラットな上下関係』『ダイバーシティ』という特徴と、日本企業の『横連携を促すレポートライン』『チャネル活用』『Noリストラ経営』という特徴を共存させることで、当事者意識を持った『働きがい』と『働きやすさ』を兼ね備えた会社を目指していきます」(古市氏)
パーソルが導入したBoxの導入事例
最後に登壇した佐藤氏は、日本市場における導入状況について説明した。産業技術総合研究所や農林中央金庫、MAXといったさまざまな企業の導入事例が紹介されたが、本稿ではパーソルホールディングの導入事例について紹介する。
パーソルホールディングスでは、「テクノロジードリブンの人材サービス企業」への進化を目指し、グループ全体のテクノロジー人材・組織の拡充とともに、事業・サービスでの実装・活用強化に取り組んでいる。
そんな同社の課題として、グループ内外のコラボレーションの加速によりコンテンツ資産を最大限に活用するために、クラウドシフトが急務となる中、セキュリティと利便性を兼ね備えるインフラの構築が求められていたという。
「このような背景から、マルウェアや不正アクセスの自動検知とコンテンツ保護などの充実したセキュリティ機能や高い拡張性により、安全で柔軟なコンテンツ基盤を実現できるという点でBoxの導入を決定していただきました」(佐藤氏)
パーソルホールディングスでは、Boxを活用して「グループ内外のスマートなコンテンツ共有基盤の構築」「場所や端末を選ばない統一されたコンテンツ活用体験」「PPAP撲滅によるセキュリティリスク軽減とファイル送受信の効率化」「容量無制限によるユーザー利用制限の解消と肥大化するストレージコストからの脱却」「Box RelayやBox Signの活用による一部の業務プロセスの自動化」「データガバナンスの強化」を実現していく方針。
佐藤氏は最後に、Boxが選ばれる理由として「保管だけでなくプロセス自動化などの業務で利活用できる」「生成AIとの相性の良さ」といった点を挙げ、会見を締めくくった。