
「当社が10年後、20年後、その先の未来においても、『より良いくらしと社会へのお役立ちを果たす』ために、自らを抜本的に変える経営改革が必要であると判断した」
こう語るのは、パナソニックホールディングス(HD)社長グループCEO(最高経営責任者)の楠見雄規氏。
パナソニックHDがグループの経営改革に乗り出す。今後の注力分野にデータセンター向け電源やサプライチェーン・マネジメント・ソフトウェアなどの「ソリューション領域」を設定。それを支える収益基盤として車載用二次電池などの「デバイス領域」、家電などの「スマートライフ領域」を位置づけた。
今回の改革のポイントは低収益事業の見極めにある。
テレビやキッチン家電などの事業がこれに該当するとして、「事業、商品・地域からの撤退やベストオーナーへの事業承継を含む抜本的な対策を講じる」(楠見氏)。かつて家電メーカーの花形だったテレビだが、場合によっては売却・撤退も辞さず、26年度末までには課題事業を一掃する考え。また、グループ各社で人員の最適化や製造・物流・販売拠点の統廃合も行い、28年度までに3000億円以上の収益改善を図るという。
楠見氏は2021年の社長就任以来、最初の2年間を「競争力強化の2年」と位置づけ、中長期の成長のための基礎体力づくりに注力。22年から持株会社制(同社では〝事業会社制〟と言う)に移行し、傘下に個々の事業会社を置く形で競争力強化につとめてきたが、思うような成果が上げられなかった。
このため、今回の改革について、社内では「何度目の改革なのか?」と、改革疲れの声も出ている。
パナソニックHDの今期(2025年3月期)の売上高は8兆3000億円の見通し。ソニーグループは12兆7100億円、日立製作所は9兆7000億円の見通しだが、2月13日時点の時価総額はパナソニックHDが約4.5兆円。ソニーグループが約21兆円、日立が約19兆円と、2社に大きな差をつけられている。
「事業競争力の発揮を阻む組織構造、コスト構造を抜本的に再構築する」と語る楠見氏。同氏にはかけ声だけではない、実行力が問われている。