ゲーム開発は、生成AIを積極的に活用する分野の1つである。2月19日(米国時間)、Microsoft Researchは「Muse」というWHAM(World and Human Action Model)を発表した。AIによってレンダリングされた一貫性のあるゲームプレイの生成を実現しており、「ゲームクリエイターを支援する生成型AIモデルへの大きな一歩を踏み出した」としている。
Museは、ゲームの世界観やプレイヤーの操作を理解し、ゲームのビジュアル、コントローラーのアクション、またはその両方を生成できるビデオゲーム向けの生成型AIモデルである。WHAMは、AIが環境や人間の行動を理解し、それに基づいて適切な対応を行うためのフレームワークであり、世界の状態(World)と人間の行動(Human Action)を統合的にモデル化することで、より適切な推論や予測を可能にする。
Museの開発では、Ninja Theoryと提携し、マルチプレイヤー対戦ゲーム「Bleeding Edge」のプレイデータが活用された。7年分に相当するゲームプレイデータを用い、画像とアクションのペアをもとにモデルを訓練。これにより、AIはゲームの物理エンジンや環境の反応を理解し、一貫性のあるプレイシーケンスを生成する能力を獲得した。
ただし、この技術はまだ初期段階であり、生成されるゲームプレイビジュアルの解像度は300×180ピクセルにとどまる。これは初期モデル(128×128ピクセル)から向上しているものの、一般的なゲームの解像度には遠く及ばない。しかし、今後の改良によって、ゲームクリエイターとプレイヤー双方に大きな変化をもたらす可能性を秘めている。
この技術の活用例として、ゲーム開発者が新たなアイデアを迅速に試し、プロトタイピングの加速が期待される。開発者が特定のゲームシーンを設定し、Museが異なるバリエーションのプレイスタイルやアクションを生成することで、新たなプレイ体験の発見につながる。また、既存のタイトルにMuseを活用し、新たな体験を付加することで、プレイヤーがゲーム制作の一端を担う可能性も模索されている。
さらに、MicrosoftはMuseをクラシックゲームの保存や体験方法を根本的に変える技術としても期待している。従来、クラシックゲームの保存はエミュレーターやリマスター版の開発に依存していたが、Museを活用することで、過去のゲームを新しいデバイスに適応させ、より多くのプレイヤーが様々なプラットフォームで楽しめるようになる可能性がある。
一方で、AIがゲーム開発のクリエイティブなプロセスに与える影響について、開発者やスタジオからは懸念の声も上がっている。Microsoftは、AIの活用はクリエイターを置き換えるものではなく、「開発者の創造性を補完するもの」と強調している。例えば、ゲームでAIをどのように使用するか、それを決定する権限をXboxの各スタジオのクリエイティブリーダーに与えている。「すべてのゲームやプロジェクトに単一のソリューションがあるわけではなく、アプローチは各チームのクリエイティブなビジョンと目標に基づいて決定される」としている。