鹿児島大学は2月18日、薩摩半島で行われた魚類調査の過程で発見されたハゼ科オニハゼ属魚類の未同定個体が新種であることを解明し、「ホタルビオニハゼ」(学名:Tomiyamichthys hyacinthinus)と命名したことを発表した。

  • ホタルビオニハゼの雄

    ホタルビオニハゼの雄。(上)生鮮時のホロタイプの標本写真。(下)生時の個体の写真(出所:鹿児島大学)

同成果は、鹿児島大大学院 農林水産学研究科・鹿児島大 総合研究博物館の佐藤智水大学院生、鹿児島大 総合研究博物館の本村浩之教授らの研究チームによるもの。その詳細は、動物に関する全般を扱う学術誌「Zootaxa」に掲載された。

鹿児島大 総合研究博物館と同大学 農林水産学研究科の研究チームは、薩摩半島での魚類調査を実施し、その過程でハゼ科オニハゼ属魚類の未同定個体を発見したとのこと。その後同個体を対象に形態学的・遺伝学的調査を実施し、インド・太平洋広域に分布する近縁種の比較検討を行った結果、この未同定個体が新種であることが判明したとする。

そして研究チームはこの新種について、標準和名を「ホタルビオニハゼ」、学名をTomiyamichthys hyacinthinus(トミヤマイクチス ヒヤシンティヌス)と命名した。なお、標準和名の“ホタルビ”と学名に含まれる種小名の“hyacinthinus”は、同種の生時においてほのかに光り輝く背びれの青色斑に由来するという。

そのホタルビオニハゼは、雌雄で異なる形態をしており、オスは第1背びれの棘が糸状に伸長してフォークのような形をしている一方、雌では背びれの棘の伸長は見られず、全体的に丸みを帯びた帆のような形状だとする。また、オニハゼ属が含まれる共生ハゼ類は、ハゼ科の中でも、海底の砂に掘られたテッポウエビ類の巣穴を利用する種が多く知られているといい、今回の研究ではホタルビオニハゼがコトブキテッポウエビの巣穴を利用する様子が確認されたとした。

  • ホタルビオニハゼの雌

    ホタルビオニハゼの雌。(上)生鮮時の標本写真。(下)生時の個体の写真(出所:鹿児島大学)

なお、今回の研究で用いられたホタルビオニハゼの標本は、すべて薩摩半島沿岸から採集されたとのこと。また過去の文献から、伊豆諸島・高知県・奄美群島・沖縄諸島・八重山諸島における分布も確認されたといい、このことから研究チームは、同種が日本国内において、南日本の黒潮流域沿岸に広く生息していると考えられるとする。また今回使用したホタルビオニハゼの4標本(標準体長:29.0mm~38.8mm)は、鹿児島大 総合研究博物館に所蔵されているとしている。