OKIグループで、ICTシステムや電気設備の設計・構築・保守やマルチベンダー機器の保守・運用などの事業を展開するOKIクロステック(OXT)は2月18日、新たに展開するGX(グリーントランスフォーメーション)ソリューションの強化に向けた施策に関する説明会を開催。同社が埼玉県鴻巣市に構える事業所にて、超軽量フレキシブルタイプの太陽光発電パネルおよび電気自動車(EV)充電インフラ設備を導入し、蓄電池を含む再生可能エネルギー(再エネ)循環型システムの実証を開始したことを発表した。
社内事業所で再エネ循環型システムの実証を開始
ICTインフラや電気・環境設備を中心として、企画や設計から保守・保全までのワンストップソリューションを展開するOXTは、先進デジタル技術を活用したさまざまなサービスを提供している。そんな同社はカーボンニュートラル社会の実現に向けた環境経営の一環として、GXソリューションに関する取り組みを推進。同社のGXソリューションは、“電力の見える化・省エネ・創エネ・蓄エネ”の4段階からなり、それぞれの段階において有効な手段を構築するとともに、グループ会社や社外パートナーとも連携しながらさまざまな取り組みを進めている。
その中で2022年6月には、東京電力が主導するコンソーシアムに参画して分散型エネルギーリソースを活用した実証事業を開始。翌年度も同様の取り組みを行うなど、再エネ活用に向けた動きを見せている。またGXに向けた施策の第1弾として、OKIに対しオンサイトPPA(電力購入契約)モデルでの電力提供サービスを実施し、同社本庄工場のCO2排出量削減に貢献した。さらにOXTは第2弾の取り組みとしてEV充電インフラの保守に力を入れているといい、2023年11月には、パナソニック エレクトリックワークスとの提携により、同社が提供するEV充電器シェアリングサービス「everiwa Charger Share」の充電インフラ設備保守・運用サービスにおいて連携を開始。その後もEV・PHEV(プラグインハイブリッド車)急速充電器の全国保守網強化に向け、ダイヘンが提供する急速充電器の保守を受託するなど、GXに向けた多角的な取り組みを続けている。
そして今般は第3弾の取り組みとして、OXTの鴻巣事業所を“環境配慮型拠点”と位置づけ、再エネによる電力の創出・蓄積・利用に向けた循環型システムを導入したことが発表された。その具体的な取り組みとして、OXTの執行役員で、同社 SI事業本部 ソリューション事業部の佐々木玲事業部長は、超軽量フレキシブルモジュールを活用した太陽光発電システム、およびEV充電インフラの導入、そして蓄電池システムやEMS(エネルギーマネジメントシステム)による拠点内エネルギーの見える化および創蓄連携実証を挙げた。
“接着工法”が可能な超軽量太陽光モジュールを導入
今回鴻巣事業所に導入された超軽量フレキシブル太陽光モジュールは、現在一般的に普及しているカバーガラスを使用した太陽光パネルに比べて非常に薄く、大幅な軽量化を実現。従来は耐荷重の問題で太陽光パネルを設置できなかった屋根に加え、壁面などへの設置も可能だという。また今回は、超軽量という強みを活かし“接着施工”による設置を行ったとのこと。従来のパネルでは重い架台などの設置が必要とされていたのに対し、モジュールと屋根を接着剤で貼り付けるのみで施工が完了するため、作業の効率化が期待できる上、折板屋根やストレート屋根などさまざまな形状の屋根にも対応できるとする。
また佐々木氏はこのモジュールの強みとして、光の反射率の低さによる周辺環境への配慮や、金属フレームレスの特性を活かした清掃コストの削減を挙げる。加えて同モジュールは、鉛やイリジウムを使用していないため一般廃棄物としての廃棄が可能であり、モジュールの一部が割れた場合でも重ね貼りが可能であるなど、運用のしやすさでもメリットを発揮するとした。
なお今回の取り組みでは、拠点建屋の屋上に672枚、庇(ひさし)屋根に42枚、外壁に27枚のモジュールを設置し、合計で約270kWの発電能力を有する設備を導入。鴻巣拠点における年間電力使用量のうち約40%を再エネ発電の自家消費でカバーできる見込みだとしている。
EV充電器のサービス実証を目指し社員向けに有償開放予定
また今回は、鴻巣事業所の駐車場内に2基のEV普通充電器および1基のEV充放電器が設置され、その保守作業における動作確認用に、社用車としてEVも配備された。なお充放電器については、停電時など建屋側の電力供給が不足した際に、EVからの電力供給を可能にするといい、緊急時のレジリエンス向上への貢献が期待できるとした。そして今般設置された3基の充電器には、前出のパナソニック エレクトリックワークスと提携して提供する「everiwa Charger Share」を採用。駐車場の空き時間には社員に対して有償で私有車充電向けに開放するといい、充電運用の効率化に加え、顧客ニーズへの対応の実証にも活用していくとする。
OXTの佐々木氏は、「これまで行ってきた環境への継続的な取り組みは、着実に成果につながってきている」とするものの、「社会的な環境への意識はますます高まっており、今後も新たなソリューションの検討を続けていく必要があると感じている」とコメント。また今回鴻巣事業所で導入されたGXソリューションについては、包括的なソリューションとしてはもちろん、顧客ニーズに合わせて一部を切り出して提供することも可能だとしており、「マルチベンダー環境でのシステム構築や提供を進め、施工技術や運用のノウハウと蓄積することで、顧客に最適なソリューションを提供し、経営課題の解決に貢献していきたい」と語った。