中国の大手ファウンドリSMICが2024年第4四半期(10〜12月期)の決算を発表した。
それによると売上高は前四半期比1.7%増、前年同期比31.5%増の22億730万ドルとなったという。地域別比率は、中国国内が89.1%、米国が8.9%、欧州/アジアが2%と、ほとんどが中国顧客向けになった。また、同四半期の売上総利益(粗利)は4億9900万ドルで、前四半期の4億4420万ドル、前年同期の2億7500万ドルから増加したが、純利益は前年同期比384%減の1億760億ドルとなり、増収減益となった。
売り上げが増加しつつも利益が下がったのは、中国政府の政策に伴う形で同社最先端となるDUVマルチパターニングによる7nmプロセスの生産で、同社がコストを負担した可能性があるとする向きもある。
2024年通期も増収減益
同四半期が確定したことに伴い、2024年通期も確定。売上高は前年比27%増の80億2990万ドルとなったが、純利益は投資収益と金融収益の減少などもあり、同45.4%減の4億9270万ドルに留まった。
このほか、2024年の設備投資額は前年比横ばいの73億3000万ドルとなり、月間生産能力は200mmウェハ換算で94万8000枚、稼働率は85.6%となった。
同社は、2025年第1四半期の売上高を前四半期比6~8%の増加と予測しているほか、2025年通期の見通しとしても、外部環境に大幅な変化がないことを前提に、売上高の伸びはファウンドリ市場の業界平均を上回るとの予想を示している。同社の主力であるレガシープロセスについては、2025年後半に供給過剰状態に陥る可能性があるとの認識を示す一方、中国製生成AI半導体の製造委託が急増しており、さらなる生産能力の増強が必要との認識から、2025年の設備投資を前年比微増の75億ドル前後になるとしている。
米国は中国に対して半導体関連の輸出規制を強化してきたが、それによりSMICが中国で唯一の選択肢となり、同社に有利に働いている可能性があると指摘する中国の半導体業界関係者もいるという。
SMICの先端プロセスは7nmが限界か?
半導体業界の一部からはSMICが5nmプロセスでの製造も可能にしたかという話があったが、噂されたHuaweiのハイエンドスマートフォン「Mate 70 Pro Plus」を分析調査したカナダのTechinsightsによると、搭載プロセッサは7nmを用いて製造されたものだとするほか、Huawei子会社のHiSiliconが設計し、SMICが製造したとされるHuaweiの最新AI半導体「Ascend 910C」も7nmプロセスの模様である。EUVではなくDUVのマルチパターニングで5nmプロセスの製造も原理的には可能だが、リソ-エッチングの工程が煩雑化し、コストが上がる一方で歩留まりが低下するため、採算は悪化することとなるため、少なくともしばらくは7nmがビジネス的には限界と見る向きもある。
Huaweiのほか、中国のAI半導体ファブレスのMoore ThreadsやBirenなどが米国のエンティティリストに追加され、中国外のファウンドリに生産委託ができなくなったため、SMICが唯一の受け皿として、そうした中国顧客からの注文が殺到しているという。
なお、米国の対中半導体規制の強化などで、中国顧客からのAI半導体需要がさらに高まり、HuaweiのAscend 910Cも需要に見合うだけの生産が間に合わないなど、同社の生産能力の増強が間に合わない可能性があるという話も出ているようである。