ブリヂストンは1月30日、タイヤ水平リサイクルの社会実装に向け、岐阜県の同社 関工場敷地内に、使用済みタイヤの精密熱分解パイロット実証プラントの建設を決定したと発表。2027年9月ごろの稼働開始を予定していることを明らかにした。

  • パイロット実証プラントの外観イメージ

    使用済みタイヤ精密熱分解パイロット実証プラントの外観イメージ(出所:ブリヂストン)

使用済みタイヤの最大処理能力は年間7500トンを見込む

ブリヂストンは、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、2022年より使用済みタイヤのケミカルリサイクルに関する取り組みを推進中。2023年には、東京都小平市の「Bridgestone Innovation Park(BIP)」に実証機を導入し、使用済みタイヤの精密熱分解試験による分解油および再生カーボンブラックの回収技術の開発を進めてきた。同社は将来、回収した分解油をリサイクルオイル化し、合成ゴムの素原料であるブタジエンなどの化学品を製造することで、再生カーボンブラックとともにタイヤ原材料として再利用するという資源循環を目指しているという。

そして今回ブリヂストンは、こうした技術の社会実装に向けて、精密熱分解プロセスの確立および最適化に関する技術実証を行うパイロット実証プラントを建設すると発表。2025年11月に着工し、2027年9月に稼働を開始する予定だとしている。使用済みタイヤの最大処理能力として年間7500トンを見込む同プラントは、BIPでの実証機導入で得た精密熱分解の基盤技術を実装しており、安定した連続運転に必要なプロセス設計や品質管理などの知見を獲得することで、再生品の量産を想定したスケールアップ技術の確立を目指すとする。また技術開発の取り組みと併せ、プラント操業のノウハウ構築やケミカルリサイクル実現を支える人財の育成も推進するとした。

なお今回のパイロット実証プラント建設は、2022年2月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より採択された「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」における実証事業「使用済タイヤからの化学品製造技術の開発」の研究開発テーマのひとつとして、ENEOSと共同で進めるプロジェクトの一環とのこと。加えて、このプラントで得られる再生カーボンブラックは、先般発表された、新品並みのゴム補強性を持つカーボンブラックの生成を目指した東海カーボンなどとの共同プロジェクトでも活用されるという。またブリヂストンとしては、今回の投資を中期事業計画における“新たな種まき”と位置づけられた事業の一環として捉えているとした。

さまざまなパートナーとの共創活動を通じてリサイクル事業の事業化に向けた「EVERTIRE INITIATIVE」に取り組むブリヂストンは、タイヤ水平リサイクルの早期社会実装を目指していく姿勢を改めて表明。またビジョンである「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」の実現に向け、同社のバリューチェーン全体で、カーボンニュートラルかやサーキュラーエコノミーの実現、ネイチャーポジティブへの取り組みを、ビジネスと連動させながら強化し、持続的な価値創造基盤の構築に挑戦するとしている。