Snowflakeは1月27日、CCCMKホールディングスのデータクラウド「Snowflake」活用に関する説明会を開催した。CCCMKホールディングス(以下、CCCMK)が属するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループ各社はSnowflakeを活用して全社にわたるデータ活用の環境を整備しているとともに、グループ会社間のデータ統合、三井住友カードとのデータ連携を行っている。

2024年にCCCMKが運営していたTポイントと三井住友カードが運営していたVポイントを統合した新生Vポイントの運営を行っているCCCMKホールディングス。同社は、Snowflakeを活用してどのような課題を解決し、どのようなメリットを享受しているのだろうか。CCCMKホールディングス IT戦略本部本部長 松井太郎氏が説明を行った。

  • CCCMKホールディングス IT戦略本部本部長 松井太郎氏

  • CCCグループにおけるSnowflake導入の歴史

データそのものがビジネスの根幹

V会員の基盤は有効ID数1.3億人、直近1年間の利用者数7000万人を抱える巨大なデータベースだ。このデータベースは、1人につき1IDのシングルIDで管理されている。松井氏は、「当社はデータを活用してV会員にサービスを提供しており、Vポイントそのものがよくポイントがたまる顧客価値の高いサービスとなっている」と説明した。

具体的には、市場構造理解、ターゲット理解、打ち手設計、施策アプローチ、購買検証といったマーケティングプロセスにデータが活用されている。Vポイントのデータはユーザーの特徴別に細分化すること、ユーザー像を可視化することが可能だ。

こうしたデータを活用して、同社はポイントのアライアンス企業、メーカーに対しコンサルティングを実施し、CRMや製品開発を支援している。松井氏は「当社にとって、データそのものがビジネスの根幹」と語った。

データ基盤が抱えていた3つの課題

データにビジネスを支えられているCCCMKだが、データ基盤において3つの課題を抱えていたという。

1つ目の課題は「分散したデータベースがもたらすパフォーマンス低下」だ。データベースが分散することで、利用や運用にまつわるコストが増大するとともに、パフォーマンスも低下したという。もはや、負荷分散やクラウド移行だけでは解決不可能な状況で、より規模の大きいリザーブド契約が必要であり、分析基盤がビジネスを圧迫する可能性があった。

2つ目の課題は「データ活用の高度化によるワークロードの増加」だ。加盟企業の増加や分析業務の高度化により、ワークロードは年々増加しており、月初や繁忙期にはクエリの遅延やクエリ待機が発生するなど業務にも支障が出る状態だったという。松井氏は「既存のアーキテクチャでは対応しきれない状況だった」と話した。

3つ目の課題は「データ活用の民主化促進」だ。全社員にBIアカウントを提供していたが、負荷対策のため、DBよりファイル抽出してBIに連携する中間作業が発生していた。そのため、「もっと拡張性があり、幅広いワークロードに耐えられる基盤が必要と考えた」と松井氏は述べた。

これらの課題を解決するため、Snowflakeが導入されたというわけだ。まず、2019年からオンプレミスの「Oracle Exadata」3台で稼働していた分析用のデータベースをクラウドサービスのデータベース「Azure Synapse Analytics」に移行。続いて、2021年から、3種のデータベースをSnowflakeに統合した。

松井氏によると、Azure Synapse Analyticsに移行したが、ワークロードの処理が間に合わず、Snowflakeに巡り合い、すべて移行したとのことだ。

  • CCCMKホールディングスの分析基盤の移行の歴史

CCCMKは分析基盤に対し、「シングルソース」「マルチワークロード」「デリバリーイージー」というビジョンを持っている。松井氏は、「Snowflakeは目的別にウェアハウスを分けられ、利用に応じて自動で拡縮するので、柔軟なコスト構造で運営できる」と語った。

  • CCCMKホールディングスの分析基盤の全体像

Snowflakeがもたらした4つの導入効果

では、こうしたSnowflakeによる分析基盤から、CCCMKはどんなメリットを享受しているのだろうか。

松井氏は、Snowflake導入による効果として、「パフォーマンスの改善」「コスト効率の向上」「データサイロの解消」「セキュリティとプライバシー強化」を挙げた。

パフォーマンス改善

データのクエリ速度は飛躍的に上がり、従来比50%以上の向上が見られたほか、待機が発生していた月初などの繁忙期もすべてのクエリが瞬時で実行されるようになり、クエリ遅延がゼロになった。「BIの親和性も改善し、スケーラブルなアクセスに耐えられるようになったことで、意思決定のスピードアップに貢献している」と松井氏は話した。

コスト効率の向上

リザーブド契約のコスト管理に比べ、従量課金のSnowflakeはリソース消費に応じたコスト管理が可能で効率がいいという。リプレース前と比べるとインフラコストは60%に削減しており、松井氏は「オンプレミスの契約形態を考えると、2倍、3倍の効果があったと考えている」と語っていた。

データサイロの解消

Oracle、Azure Synapse Analytics、Verticaに分散したデータベースをSnowflakeへ統合したことで、データサイロが解消され、データ更新のリードタイムが向上した。「データベースが分散していると、さまざまなデメリットがあった。データベースを統合すれば、1つのデータベースのスキルで運用できる。 データの更新のリードタイムも改善された」(松井氏)

セキュリティとプライバシー強化

同社のプライバシー要件は厳しく、それを満たすアクセスコントロール管理は、運用負荷が非常に高かったという。Snowflakeの機能を活用することでプライバシー保護を強化できたうえ、運用も効率がよくなったそうだ。

  • Snowflakeがもたらした導入効果

Snowflakeを活用して三井住友カードとデータ連携

冒頭で述べたように、CCCMKはグループ間だけでなく、Vポイントにおいて業務提携を行った三井住友カードともSnowflakeのデータシェアリングによりデータ連携を実現している。

クラウドサービスとして、CCCMKはMicrosoft Azureを、三井住友カードはAmazon Web Servicesを利用している。AzureからAWSへのデータレプリケーションにより、シェア対象のデータ複製を行い、AWSのレプリケーション先のデータベースからデータシェアリングにより連携を行っている。

松井氏は、「グループ外の会社とのデータ連携はあまりないのでは。従来のファイル連携はインタフェースの取り決めなどが必要で、エンジニアが時間をかけて実証していた。Snowflakeではそうしたことが不要であり、運用負荷を大きく下げることができた。90%以上の工数削減になっていると思う」と語っていた。

松井氏は、今後の展望として、「顧客価値の追求」「グループシナジーの最大化」「新規事業の促進」「コラボレーションの拡大」に取り組んでいきたいと語っていた。