Hondaは米ラスベガスで開催された「CES 2025」プレスカンファレンスにおいて、2026年にグローバル市場への投入を予定しているEV「Honda 0(ゼロ)シリーズ」のプロトタイプ2車種を世界初公開した。同時に独自のソフトウェアデファインドビークル(SDV)として、かつて同社が開発した2足歩行ロボット「アシモ」の名を冠した「ASIMO OS」を発表し、会場を沸かせた。

  • HondaのCES 2025 プレスカンファレンスの様子(筆者撮影、以下同)

ロボからビークルOSへ。アシモOSが担うもの

シリーズフラグシップモデルのプロトタイプ「Honda 0 SALOON(サルーン)」に乗ってステージに登場した、Honda 執行役専務で電動事業開発本部長の井上勝史氏は、見た目のデザインは2024年に発表したコンセプトそのままだが、テーマは「Thin, Light, and Wise.」(薄い、軽い、賢い)のうち「Wise」をあらわすものであると紹介した。

SmartではなくWiseにした理由は、クルマがユーザーについて考えるインテリジェント(知能)によって「Ultra Personal Optimization」(個人最適化の強化)を行うためで、ホンダが掲げるものづくりの基本思想である人間中心に通じるという。

0シリーズは購入後もスマートフォンのように機能がアップグレードされ、乗るほどパーソナライズされる。Wiseの運転体験を提供するイメージ動画では、ドライバーがハンドルを握って運転するシーンもあり、自動車本来の楽しさも忘れられていないことが感じられた。

そして、その体験を実現するのが「ASIMO OS」(アシモOS)だ。自動運転とロボティクス技術は、どちらも自動化という点において共通するものがあり、あのテスラも2足歩行ロボットを発表している。CES 2025の会場では、モビリティをテーマにした展示エリア(ウェストホール)で多くのロボット関連の展示が見られ、2002年生まれのアシモが自動運転向けOSへと進化したのは、自然の流れといえるかもしれない。

井上氏は「外界を認識し、人の意図をくみ取って行動するアシモの頭脳が進化し、0シリーズに受け継がれている。アシモと同じく世界に驚きと感動を与え、次世代EVの象徴となることをめざす」と述べた。

次に登壇したHonda R&D AmericasのStephen Frey氏は、世界初の自動運転レベル3を実現した「Honda SENSING Elite」(ホンダ センシング エリート)の進化について説明し、実現するHelm.aiの技術を紹介した。

運転中に無数に広がる景色を抽象的に認識し、人のように推定することで、初めての道でも走れるようになる。また、アシモOSと協調AIによって譲り合いの精度を上げ、事故や道路にモノが落ちているといった状況や、高速道路での車線変更にも安全に対応できるとしている。

車載SoC開発でルネサスと協業。充電インフラ強化も

Honda 0シリーズは、AIやECU(エンジンコントロールユニット)で個人認証し、感情や意図推定、シーン理解を行うなど、さまざま領域を束ねるセントラルアーキテクチャー型を採用している。その実現のために必要な、最先端の車載SoC(半導体)をルネサスと共に開発することも発表された

ルネサスがリリースした車載用「R-Car SoC」をベースにAIアクセラレータを追加してカスタマイズするが、半導体技術としてTSMCの3ナノメートルテクノロジーを採用。2,000TOPS(Tera Operations Per Second)というAI処理性能を、省電力で可能にすることを目標にしている。

EVに不可欠な充電ステーションについては、北米では大手自動車メーカー8社で設立した「IONNA」(アイオナ)で2030年までに3万の充電ポイントを設置。さらにテスラの「Super Chager Network」も使えるようにすることで、計10万以上の充電網を提供する。あわせて、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の生成AIなどの技術を活用し、充電ポイントの検索やルートサービス、支払いなどをシンプルにすることもめざす。

また、BMWとフォードのジョイントベンチャーである「ChargeScape」(チャージスケープ)と、2024年6月に提携した家庭用エネルギーソリューションを開発する「Emporia」とで、独自のマネジメントが可能な新エネルギーサービス「Honda Smart Charge」の提供を計画していることも発表された。

「Honda 0 SUV」も披露。勢いづくホンダEVに注目

最後の締め括りとして、0シリーズの第一弾となる中型SUVのプロトタイプ「Honda 0 SUV」が発表された。広い空間と開放的な視界、自由度の高い居住姿勢を実現しており、前出のサルーンとともに2026年前半に北米市場から投入し、その後日本を含むグローバル市場で販売する。

今回の会場展示はサルーンとSUVの2台が並ぶだけという、2024年にも増してシンプルな内容であったが、ブースには連日多くの参加者が詰めかけていた。ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA 1」も2026年に北米で発売予定となっており、ホンダがふたつのブランドでEV市場全体を牽引するのか注目したい。