大日本印刷(DNP)は、ミニLEDバックライト向けの光拡散フィルムを開発したと1月16日に発表。従来のミニLEDディスプレイなどで採用されていた拡散板を使わずに、同等の輝度を実現しつつLEDの素子(ドット)の映り込みを抑えられ、ディスプレイの厚みや重量の低減につなげられるとしている。
今回開発したフィルムの厚みは50マイクロメートル(μm、1μm=0.001mm)で、通常の拡散板と比べて約40分の1という薄さを実現(DNP調べ)。これによりディスプレイの薄型化につながるほか、製造工程が簡素化され、生産コストの低減が期待されるほか、モバイル端末など小さな画面にも展開できるとしている。
このフィルムは、特定の光の波長を透過し反射する誘電体多層膜と、光を屈折させる超微細なプリズムの賦形(素材を削らず変形させて製品を成形する方法)で構成。
LEDの真上に出た光はドットの映り込みにつながるが、このフィルムでは誘電体多層膜によって直線の光を透過させず、設計された入射角度の光だけを透過させることで、ドットの映り込みを低減する。
マイクロプリズムは、LEDの光の方向を制御し、左右に光を拡散させるはたらきをもつ。光の拡散によって明るさを均一化することで、ドットの映り込みが低減し、光の利用効率も高まるという。
ミニLEDディスプレイは、直径100〜300マイクロメートル程度のLEDをパネル基盤へ高密度に実装したもので、高輝度によるあざやかな画質と低い消費電力性能を特長とする。液晶や有機EL(OLED)に続く次世代ディスプレイとして注目を集め、既に一部のテレビやPCなどで採用され始めており、今後小型電子デバイスにも利用が拡がるなど、世界的な市場拡大が見込まれている。
一方でミニLEDは、パネル基盤に高密度に配置したLEDの素子(ドット)が、人の目で見えやすいため、拡散板や特殊な印刷パターンを活用して映り込みを減らしていた。しかし、厚みのある拡散板を使うと光の透過率が低く、消費電力量が増えるという課題もあった。
こうした課題に対し、DNPの光拡散フィルムは、拡散板などがなくてもドットの映り込みを低減でき、輝度を落とさずにディスプレイの薄型化や消費電力低減に寄与できるとアピールしている。
なお、同フィルムについては、ディスプレイ関連で世界的に権威のある論文誌「Journal of the Society for Information Display」(Journal of SID)のWebサイト「Best of IDW2023」に、SPECIAL SECTION PAPERとして招待論文が掲載されたとのこと。