日本電信電話(NTT)と東日本電信電話(NTT東日本)、TBSテレビは、IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)を用いて、生放送の音楽番組(「輝く! 日本レコード大賞」)における音声のリモートプロダクションを地上波で初めて成功させたと1月6日に発表した。
NTTらが進める、映像・音声プロダクションの効率化と高度化に向けた取り組み。番組の制作拠点である民放キー局・TBSの赤坂スタジオサブ(東京・港区)と、生放送の音楽番組の実施会場であり、撮影現場でもある新国立劇場(同・新宿区)をAPNで接続し、赤坂スタジオサブに配備されたミキサーなどの機器を使って、音声リモートプロダクションを実現。現地制作スタッフの人数低減につなげたという。
映像制作におけるリモートプロダクション(撮影現場と制作拠点をネットワークで接続し制作を行う手法)は、現地に中継車で多くの機器とスタッフを送り込む従来の番組制作スタイルにおける業務効率化の課題や、映像・音声系技術者数の不足といった社会課題の解決にも寄与することが期待され、実現に向けて映像・音声制作装置や技術の標準化や集約化が進んでいる。
また、スタジアムや劇場で実施する大規模なイベントにおいては、中継車や制作スタッフを大量に現地に送り込むことが必要であり、そのコスト抑制と高品質な制作を行う制作環境の確保も課題となっている。
そこで今回の取り組みでは、大容量・低遅延・ゆらぎなしの特徴を持つIOWN APNを活用。音声制作に必要な音声信号や機器間の制御信号を、音声環境が良いTBSの赤坂スタジオサブまで超低遅延のリアルタイムで伝送し、中継現場ではない遠隔地(スタジオ)で制作できる環境を実現した。
また、ネットワーク遅延の時間変動がない遅延ゆらぎなしの伝送環境を用いることで、拠点間の接続に対して、PTPの時刻同期信号をネットワーク上で透過させ、高品質な装置間の継続的な同期も実現したという。
その成果として、リモート拠点の音声64チャネル分のリアルタイム伝送(音声規格:Dante準拠)によるリモートプロダクションに成功。従来のネットワークでは難しかった、生放送音楽番組で求められるレベルの安定的な拠点装置間のPTPロック維持を、遅延もゆらぎもなしで成功したという。また、往復5ms未満の遅延で、遠隔での音声プロダクションを実現した。
また、以下の成果も得られたという。
- 生演奏と同タイミングで音声素材の一部を赤坂TBSの制作拠点に伝送
- 音声調整・制作後に、現地の中継車に再び送り返し
- 最終プログラムを制作し、生放送の音声プロダクションで、現地の中継車設備とTBSの赤坂スタジオサブ設備の連携がリモートプロダクションとして可能であることを確認
今回の取り組みは、前出の3者による共同施策として推進。IP-GWなどの映像系のネットワーク装置については、ソニーマーケティングからの提供を受けている。
今後はこの取り組みをふまえ、映像・音声制作のフィールド実証を共同実施。映像・音声プロダクションDXのさらなる推進による制作の質の向上、音声制作拠点や撮影現場へのアクセシビリティの確保に寄与するとのこと。また、基盤となったAPNの技術を、放送局各局および各制作拠点に展開することで、映像・音声制作業界におけるプロダクションDXの発展による制作の効率化と高度化をめざし、3社で連携を図っていく。