SEMIは12月9日、12月11日より東京ビッグサイトにて開催される「SEMICON Japan 2024」を前に恒例となっている半導体製造装置市場の2024年末市場予測を発表した。

それによると、2024年の半導体製造装置(新品)の市場規模は前年比6.5%増の1128億ドルで過去最高を更新する見込みだという。2025年以降も前工程および後工程の両面で成長が期待されており、2025年には1215億ドル、2026年には1394億ドルと過去最高を更新し続けることが予測されるという。

  • SEMIによる2024年末版の半導体製造装置市場予測

    SEMIによる2024年末版の半導体製造装置市場予測 (資料提供:SEMI、以下すべてのスライド同様)

SEMIのSr. Director, Market IntelligenceであるClark Tseng氏は、2024年のエレクトロニクス市場は第3四半期より上昇傾向に転じ前年同期比4%増、第4四半期では同8%増の伸びが期待されているが、全体としては当初期待していたほどの伸びはなく、前年比では当初の7%成長から3%成長へと下方修正を行ったという。

  • SEMIのSr. Director, Market IntelligenceであるClark Tseng氏

    SEMIのSr. Director, Market IntelligenceであるClark Tseng氏

しかし、IC市場を見ると、第2四半期も同27%増、前四半期比でも8%増を記録。第3四半期も前年同期比32%増、第4四半期も同32%増と堅調に伸びていることを指摘。特にメモリ価格が改善されたことから非メモリ、メモリともに後押し要因となっているとしており、第2四半期をメモリのみで見た場合の成長率は同91%増、非メモリのみの成長率は同11%増で、メモリがけん引役になっていることを強調する。

  • エレクトロニクス市場とIC市場の四半期別推移

    エレクトロニクス市場とIC市場の四半期別推移

また、四半期ごとの在庫レベルとファブの稼働率を見ると、在庫の調整が課題とされていたが、通信関連やコンピュータ関連では在庫調整が終わりを迎え、健全化が進んでいるという。とはいえ、全体的には在庫レベルは安定した状況に向かうものの、産業向けや車載向けの在庫調整は続いており、こちらは2025年上半期まで調整局面が続くと予想されると、最終アプリケーションごとに温度差があることを指摘。一方の稼働率については、第1四半期の60%超で底を打ち、年後半に向けて徐々に上昇。第3四半期から第4四半期にかけては70%程度でほぼフラットで推移しているとする。これは先端プロセスの稼働率は高いものの、成熟プロセスでの稼働率改善が立ち遅れていること、ならびに自動車、産業機器の需要が鈍化している影響によるもので、最終製品の市況改善が進むであろう2025年は緩やかに稼働率も上昇していくことが期待されるという。

  • 四半期ごとの在庫レベルと稼働率の推移

    四半期ごとの在庫レベルと稼働率の推移

AIを中心に1兆ドル市場を目指す半導体産業

2024年の半導体市場の成長をけん引したのはメモリだが、そのメインの最終アプリケーションがクラウド・サービス・プロバイダ(CSP)、いわゆるデータセンターである。その設備投資額は2024年に1920億ドル、2025年には2310億ドル、そして2026年には2540億ドルへと成長すると予測され、その市場規模は半導体よりも大きい。こうした積極的な投資がさまざまなAI需要にこたえることを目的に進められている結果といえるが、逆に言えば、それだけAI需要が継続することとなる。

  • CSPの設備投資額推移

    CSPの設備投資額推移予測

そのため半導体市場そのものも、AI需要に後押しされる形で2024年は前年比20.5%増の6000億ドル超えを達成。2025年もAIデータセンターからの需要を中心に成長し、同14.6%増、2026年も同じく同4.1%増と成長が続き、2020年代後半に入るとAIデータセンターの整備を終えても、エッジAI分野が伸びていく形で、2027年が同7.2%増、2028年が同7.1%増、2029年も同9.8%増、そして2030年は同5.7%増で1兆ドルに達するとの見通しを示す。

  • 半導体市場の今後の予測

    半導体市場の今後の予測。AIに後押しされる形で2030年には1兆ドルに達することが期待される

「2024年、2027年、2030年の最終アプリケーション別の半導体市場規模を見ると、どの年ももっとも規模が大きいのがサーバ、データセンター&ストレージであり、これはAI関連の投資の中心分野であり、売り上げシェアを見ると2030年には全体の30%を超す規模にまで成長する」(Tseng氏)と、今後もAI中心で半導体産業が構成されていくとする。

  • 2024年、2027年、2030年の最終アプリケーション別の半導体金額

    2024年、2027年、2030年の最終アプリケーション別の半導体金額と全体に占めるシェア

2024年の半導体製造装置市場は中国とAIがけん引

IC市場ではなく、それを作るための半導体製造装置市場の2024年の動きについて同氏は、市場規模は前年比6.5%増の1128億ドルで7月の予測を上回る値としている。背景には、中国での設備投資が現在も予想よりも多く行われていること、ならびにAI関連、特にメモリ(DRAM)関連需要が当初の予測よりも大きいためだという。また、2025年以降は中国が鈍化する一方、北米が伸びることから同7.7%増の1215億ドル、2026年も同14.8%増の1394億ドルと成長が継続することを予測している。

半導体設備投資をデバイス別で見ると、市場の過半を占めるファウンドリ/ロジックは2024年が横ばいの590億ドルで、2025年も前年比3%増の608億ドルだが、この年から2026年にかけて投資の大半が先端プロセスに移っていくとみられ、2026年は同15%増の690億ドルと予測している。一方のDRAMについては、2024年は同35%増の190億ドル、2025年も同10%増の210億ドル、2026年はほぼ横ばいの220億ドルとしているほか、NANDは2024年は軟調で横ばいの90億ドルとするが、300層以上に向けた投資やエンタープライズSSDに対する集積度向上に向けて2025年は同48%増の140億ドル、2026年も同7%増の150億ドルとしている。

  • 半導体設備投資額推移

    デバイス種別で見た場合の半導体設備投資額推移

また、後工程(対象はテスト装置と従来の組み立て/パッケージング装置)市場については、2024年はSoCテスタに対する需要が高いとするほか、メモリテスタもハイエンドメモリに対する戦略的投資から強い回復が見られているとのことで、テスト装置市場は同14%増の71億ドル、2025年も同15%増の82億ドル、2026年も同19%増の97億ドルと引き続き成長が期待されるとするほか、組み立て/パッケージング装置についても、2024年は同23%増の49億ドル、2025年は同16%増の49億ドル、2026年は同23%増の71億ドルとしており、これらのけん引役となるのがAI関連需要に後押しされる先端パッケージだという。

  • 後工程のテスタおよび組み立て・パッケージング装置の市場推移

    後工程のテスタおよび組み立て・パッケージング装置の市場推移。2.5D/3D ICのようないわゆる先端パッケージングプロセス装置の金額はここに含まれず、WFE(前工程)の方に含まれる点が注意が必要である

日本は2030年ころまで半導体製造装置への投資が継続

半導体製造装置市場を国・地域別に見ると、2024年のトップは中国で、世界に占める割合は43%ほどだが、これは米国の対中半導体規制が強化される前の駆け込み需要との見方が強く、2025年はその割合を31%まで低下する見通しだという。ただし、金額で見れば、最大市場であることには変わりはないという。市場規模2位は台湾で、2026年は抑制されたものの、2025年は先端プロセスへの投資の高まりから同60%以上の伸びを記録することが期待されるとする。

  • 国・地域別に見た半導体製造装置市場の推移

    国・地域別に見た半導体製造装置市場の推移。輸出規制などの影響から中国が今後市場規模を減らすが、それでも世界最大であることには変わりがない

このほか、日本市場も健全な成長が進むことが期待されるという。同氏の見通しでは、「前工程への投資は2024年がこの10年間の底で、2025年から2028年までプラス成長が続いていく。ここで過去と異なるのは、2020年の投資の大半はメモリで、それにパワー半導体が続いていた構図であったが、2025年以降はロジック/ファウンドリへの投資が進むこととなる。2028年までではなく、2029年もこうした傾向は続いていく」とし、JASM、Rapidusを中心とした先端プロセスに向けた投資をはじめ、キオクシア/Western Digital連合によるNANDへの投資、マイクロンによるDRAMへの投資、そして300mm化を含め、複数の企業が注力するパワー半導体への投資と幅広い分野で投資が継続していくことを強調。新工場の建設についても、2023年から2027年にかけて、中国の45という計画は置いておいても、北米の18に次ぐ、欧州の12、台湾の11とならぶ11工場が予定されており、そうした新工場の稼働もあり「2030年ころまで日本の成長基調は続いていくだろう」と、長期的に見てもよいポジションに居るとの見方を示している。

  • 日本地域における半導体設備投資額の推移

    日本地域における半導体設備投資額の推移。2025年以降、これまでのメモリ頼みからファウンドリ/ロジックへの投資も進み、バランスの良い環境が形成されていくこととなる