三重大学、日立国際電気、デクセリアルズ フォトニクス ソリューションズ、KDDI総合研究所、東洋電機は、鈴鹿サーキットで撮影した4K非圧縮マルチチャネル映像を、光無線と光ファイバでライブ伝送することに成功したと12月6日に発表。光ファイバの敷設が難しい場所から、モータースポーツなどの多視点・高精細映像を視聴者へ届けられるようになるという。

  • フィールド実証実験ネットワーク構成概略図

5者は、「臨時に大容量回線を必要とし、かつ光ファイバの敷設が難しいイベントなど」での利用を目的として、光無線技術を含む電波・光融合無線技術の研究開発を進めてきた。今回、東洋電機が開発したオールオプティカル方式光無線トランシーバを使い、鈴鹿サーキット(三重・鈴鹿市)で10月27日にフィールド実証を行った。この実証は、同サーキットを経営するホンダモビリティランドと、三重県北勢地域をサービスエリアとするケーブルテレビ事業者のシー・ティー・ワイの協力で実現した。

具体的には、サーキットに設置した4Kカメラ×4台で撮影した、4チャネルの非圧縮4K映像(12G-SDI)信号を、商用サービスに用いられるIP伝送規格に則って単一のフレームに変換。サーキットの逆バンクコーナー付近とグランドスタンドの屋上に設置された光無線トランシーバを使い、電気信号に変換せず光信号のままで2地点間(350m)を伝送。そこからさらに光ファイバ伝送システムを経由し、55km離れたケーブルテレビ事業者の社屋まで映像をライブ伝送した。

このフィールド実証は、独自開発した光信号と電気信号の相互変換を行わない光無線トランシーバを使って、光信号のまま伝送を行い、光ファイバが敷設されていない場所から遠方地まで100Gbpsの通信を実現したことや、放送・通信事業者による商用サービスを見据えたネットワーク構成で実証した点を特徴としている。既設の光ファイバを含む実フィールドで、光無線技術を使った4K非圧縮マルチチャネル映像の伝送(100Gbpsの通信)は世界初とのこと。

  • フィールド実証イメージ図

光無線伝送システムは、光ファイバが敷設されていない区間で一時的に臨時回線を設営する際に利用されている。従来は光信号と電気信号の相互変換を行う方式の光無線トランシーバが使われてきたが、この接続方式では伝送容量が0.1~10Gbps程度であり、将来的な6G時代に求められる性能は満たせない。

東洋電機が今回開発した光無線トランシーバは、高速・高精度に光信号を自動追尾する機能を搭載し、光ファイバのコアから出射された光を電気信号に変換することなく、光信号のまま対向側の光ファイバのコアに入射させるオールオプティカル型の接続方式を採用。

伝送信号のフォーマットやビットレートに依存せずに通信でき、既設のシングルモード光ファイバ間をシームレスに接続できるため、従来型と比べて大容量通信が行えるという。また、光信号と電気信号の相互変換を行わないため、消費電力や遅延を削減できるとのこと。

  • 光無線トランシーバの構成概略図。上(a)が従来型、下(b)がオールオプティカル型